インドネシア、首都移転という大胆な試みは成功するのか?
大胆な首都移転
ジェトロ 4月10日「首都移転に向け、ジャカルタ特別州法案が可決」のように、インドネシアの首都移転の動きが活発だ。 【写真】必ずしも輝く未来が待っているというわけではないアジアの国々 また、同記事では、「バスキ・ハディムルジョノ公共事業・国民住宅相は4月2日、10月20日に予定されている新大統領就任式を同地で実施する計画を明らかにした(CNBCインドネシア 4月3日)」とも伝えている。 新大統領のプラボウォ・スビアント氏は、2014年と2019年の過去2回の大統領選挙に立候補したが、いずれもジョコ前大統領に敗れた。しかし、前回の選挙後、政権基盤の強化を目指すジョコ前大統領から国防相として迎え入れられるなどして関係を強化。 今年2月の選挙では、ジョコ前大統領の長男のギブラン氏を副大統領候補とし、新首都への移転を始めとして、ジョコ政権路線の継続を公言していた。 この首都移転は、読売新聞 昨年10月24日「別の島に首都移転するインドネシア、険しい山道の先の丘の上で建設進む…費用の大半は民間投資頼み」のように難問に直面している。 同記事にあるように、過去にも3人の大統領が首都移転を検討したが実現せず、ジョコ氏が2019年4月に構想を打ち出し、ようやく工事に着手したのだ。 しかも、地元メディアが昨年7月に報じた世論調査では、57%が首都移転に同意していない。 さらに、インドネシア政府は、首都移転費用を少なくとも466兆ルピア(約4兆4000億円)と見積もる。その費用の内国費で賄うのは2割だけの予定である。残りを民間や外国からの投資などで賄うとしているが、果たしてうまくいくであろうか。 その上、近年世界で行われた首都移転は、国土交通省HPの「海外の代表的な首都機能移転」の通りだが、ブラジルのブラジリアや、オーストラリアのキャンベラのように「首都としての存在感」を示すことができていない場合が多い。 しかも、ヌサンタラへの「首都移転」は米国のワシントンD.C.のような「政治の中心だけ」を目指しているわけではない。ニューヨークやカリフォルニアのような「産業の中心」をも移転させようという壮大な計画である。 過去の経緯から考えると成功の確率が低いとも思える大胆なチャレンジをインドネシア政府が強力に推進してきた背景には、現在の首都ジャカルタの深刻な都市問題が存在する。