Luupが挑んだ「規制のデパート」 道交法を改正させたロビイストの哲学
人口減少、地域格差、脱炭素、デジタル化──。日本が直面する数々の社会課題を克服するには、企業の知恵と力が欠かせない。利害対立を乗り越え、新たなルールを共に生み出した先に活力ある未来が待つ。 【関連画像】プロのロビイストがルール改正に関わる ●ロビイング専門会社の支援で実現した主な近年の施策4つ 「法律を検討しているかというと、そうではない」。2024年12月13日、政府の規制改革推進会議がオンラインで開いた地域産業活性化に関する作業部会。国土交通省の担当者がこう口にすると、部会のメンバーは「閣議決定違反ではないか」と反発を隠さなかった。 石破茂政権で初となる、一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」の議論。政府は4月、タクシー会社が運行主体となる日本版を条件付きで解禁した。現在は50超の地域まで広がったが、運行時間や運行台数に関する制約が多く、ドライバーは集まりにくい。 伸び悩みを打開するには、全面解禁が最良の策だ。6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)は、全面解禁を巡り「法制度を含めて事業の在り方の議論を進める」と記し、近い将来の法改正をにおわせた。石破政権もこれを継承する構えだ。それでも国交省が渋るのは、政府・与党の意見が定まらないからだろう。 全面解禁に慎重な自民党のタクシー・ハイヤー議員連盟は、作業部会の2日前に総会を開いた。高市早苗前経済安全保障相ら議員と秘書が詰めかけて部屋はごった返し、用意された150部の資料が足りなくなったほどだ。同じく慎重な公明党が、国土交通相のポストを押さえ続けている影響も透ける。 ●理論武装して粘り強く闘う 国内のルールメーキングで、規制改革推進会議は最大の舞台装置だ。そこで全面解禁の機運が高まってこない日本版ライドシェアは、このまま尻すぼみになってしまいかねない懸念もある。 推進会議の委員で、経済同友会の規制改革委員長も務める間下直晃ブイキューブ会長は、「政治的に馬力のある業界団体が抵抗している場合、相当に風が吹かないと簡単には動かない」と話す。もちろん、抵抗勢力を敵視しているわけではない。「経済的な観点に立ち、実現可能な市場規模を大きくするイメージを共有できれば、規制改革は成功できる」 現状のライドシェア制度を「なんちゃって」と批判しながら、まだ社会実装の初期段階と捉える間下氏。「規制のデパートである日本でも、岩盤中の岩盤であるルールを変える上では及第点。ドライバー不足が解消できないことがデータで明らかになりつつあり、次のステップに向かうべきだ」と訴える。 間下氏はブイキューブがオフィス向け防音個室ブースを開発した17年ごろ、消防法や建築基準法などを所管する官庁を回った。「法解釈の整理など調整に奔走し、市場をつくった経験は大きかった」。一気に突破できないなら、理論武装して粘り強く闘う──。間下氏はルールメーキング成功のコツを再び生かす腹をくくっている。