第2世代が引き継ぐジョージ・ナカシマの精神。『ミラナカシマ展』が〈桜製作所 銀座店〉で開催中。
東京で開催の『ミラナカシマ展』では、ジョージ・ナカシマの精神を継承している娘ミラさんの「眼」が見どころ。 【フォトギャラリーを見る】 「今の時代、自然の素材を使い、手作りで、いいデザインのものは本当に珍しいですよね」 20世紀のアメリカを代表する家具作家だったジョージ・ナカシマの娘、ミラ・ナカシマはそう話す。彼女は、ペンシルベニア州ニューホープに父ジョージが開いた工房で1970年から働き、やがて工房を受け継いだ。現在、ナカシマの家具を正式に製造するのはそのジョージ・ナカシマ工房と、生前に彼と交流のあった香川県の桜製作所だけだ。本展では彼女の監修のもと、桜製作所を継ぐ永見宏介が選木、木取りをして、職人が仕上げた家具が並ぶ。木取りとは、自然のままの木の形のどこをどう使うかを決める工程。「木の声を聞く」姿勢が欠かせないという。
「木取りに大切なのは、心。だからどんなに経験を積んでもわかる人とわからない人がいます。あとは建築などを勉強して、構造の作り方を理解していることです」 ナカシマの家具は、こうした木を扱う以上、基本的なサイズ感や脚部の形状は決まっていてもユニークピースに近いものが多い。それでは日本とアメリカで、職人の仕事に差はあるのだろうか。
「技術の高さは同じですが、木の見方や手の使い方はひとりずつ違います。機械ではなく人の手で作るから、個人の性格が出る。そこがおもしろいところです」 ミラさんが木を見る眼と、桜製作所の技術がひとつになった家具は、とても貴重。ジョージ・ナカシマが、まだ子どもだったミラさんの名前をつけた《ミラチェア》も、特別なタイプを展示する。
「とても体に合います。あの時代、お父さんはエルゴノミクス(人間工学)を知らなくても座りやすい椅子を作っていた。不思議ですね」
「ミラナカシマ展」
桜製作所創業75周年、創業者生誕100年記念。日本で初製作したミラ・ナカシマ作品はじめ貴重な家具が並ぶ。●〈桜製作所 銀座店〉東京都中央区銀座3-10-7 ヒューリック銀座三丁目ビル1F TEL 03 3547 8118。~2023年12月26日。11時~18時30分。お盆、年末年始休。
photo_Masanori Kaneshita text_Takahiro Tsuchida