韓国発「相手の表情などから気持ちを察する」コミュニケーション能力「ヌンチ」が世界で話題に?
相手を尊重しつつ自己主張する
悪い流れを断ち切り、相手との関係を改善するには自己観察のセルフヌンチをおこなうといいそうだ。「自分に対する不満を抱えたまま他人とポジティブな関係を築くことなどできません。感情的にならず、感情と同化もせず、自分の考えや気持ちを一歩離れたところから冷静に見つめることを学ぶべきです」とデボラ・ロマン・ドラクールは言う。もうひとつ、ヌンチのスキルを上げるには、自我を妄信せず、無意識のメカニズムを疑い、自分が何を求めていてなにを恐れているのかを明確にすることも大切だ。自分のことがクリアになれば、その裏返しとして相手の気持ちを推察することも容易になる......自分のことを大切にしつつ。 自分らしくいること、相手を尊重しつつ自分の気持ちを表現すること。いわゆる「アサーション」をはじめとしたコミュニケーションのソフトスキルはヌンチ上達のためのツールとみなすことができる。「私を主語にしてしゃべりましょう。相手を非難せずに自分がどう感じたかを言いましょう。そうすれば相手も不快に感じないでしょう。場合によっては会話を一旦中断し、相手が応じてくれそうなタイミングで会話を再開してもいいかもしれません」とデボラ・ロマン・ドラクール。ヌンチのスキルが向上するまでには時間がかかる。まずは自分にも他人にも寛大になろう。「すぐに思い通りに行動できる人はなかなかいません。自分が間違っていたことを認識し、相手と共有できるのなら間違うことは大きな問題になりません。人間関係のほころびを修復しながら前進していくことになるからです」 スタンフォード大学上級講師でリーダーシップ論を専門とするデイビッド・ブラッドフォードも似たような考えだ。キャロル・ロビンとの共著『スタンフォード式 人生を変える人間関係の授業』(日本語翻訳版;CCCメディアハウス刊)があるデイビッド・ブラッドフォードは「インターパーソナル・ダイナミクス」理論を提唱し、シリコンバレーのエグゼクティブを何百人も教えてきた。こうしたソフトスキルは感傷に浸っていても身につかない。己と他人を真に知るためには、多大な努力と経験の積み重ね、やりぬく意志が必要だ。すぐに学べるものでもなければ万人に当てはまるレシピもない。なぜならそれはひとつの哲学であり、セラピーであり、人生そのものなのだから。
text: Nadia Hamam marty (madame.lefigaro.fr)