海外セレブに「セクシーな秘書」ファッションがトレンド?!大人気の「ベヨネッタ」メガネとは
3つのマイクロトレンド
「ベヨネッタ」メガネの流行は、ファッションの荒波を越えていく数々のトレンドのひとつに位置付けられるだろう。集合的無意識の中でこれはとてもインテリっぽい小物であり、その慎ましさが最近のトレンドとマッチしている。とりわけSNSでの3つのマイクロトレンドと相性がいいようだ。ひとつは"office sirens(オフィスサイレン)"というスタイル。"サイレン"とは魅惑的な女性を指し、要するにフェミニンなオフィススタイルのことだ。マストアイテムはペンシルスカートにジャストフィットのシャツの襟ボタンを開けて着こなし、革のハイブーツやパンプスを履くこと。カラーパレットはグレー、ブルー、ブラックのニュートラルカラーだ。ドラマ「SUITS/スーツ」のメーガン・マークル、映画『プラダを着た悪魔』のジゼル・ブンチェン、ドラマ「ザ・プラクティス ボストン弁護士ファイル」のララ・フリン・ボイルら、1990年代から2000年代にかけてアメリカの企業で働いていた女性たちを思い浮かべてほしい。 メガネはまた、"secrétaire core(セクレタリーコア)"の秘書スタイルに不可欠なアイテムだ。これは前述のオフィスサイレンと似たようなスピリッツとカラーパレットを持つが、ワードローブはもう少し緩やかで、キトンヒールパンプスやボタンカーディガン、オーバーサイズのブレザーもありだ。これを"librarian core(ライブラリアンコア)"の司書スタイルと関連づける人もいる。この3つめのスタイルは同様に野暮ったいとされる服を好ましいものとしてみなすものだが、アカデミックな雰囲気に重点を置いている。ローファーに白いソックス、タータンチェックのスカート、ウールやツイード製品が主体となる。
それにしてもなぜ流行った?
ファッションに周期性があることは言うまでもないが、時にはちょっとしたひと押しによって、これまでファッションの世界で傍に追いやられていたアイテムが復活する。ラグジュアリーブランドは今回の復活を予測もしくは予見していたのか、2023年3月に発表された秋冬コレクションではメガネが偏在していた。ルイ・ヴィトン、ボッテガ・ヴェネタ、フェンディ、メゾン マルジェラ、バレンシアガで、このシーズンの小物として取り入れられている。特にミュウミュウの2023年秋冬コレクションは、今から振り返るとまるで予言のようだった。カーディガンを重ね着したくずし髪のモデルたちはバッグを手に、グレー、ベージュ、ブラックの単色の服を纏い、次々と登場した。地味なルックにひねりを加えているのは、同じく流行中の"ノーパンツ"、のスタイルだったことだ。 ブランドだけでなく、もちろんSNSの存在も大きい。モデルのベラ・ハディッド(インスタグラムのフォロワー数は6,000万人)が15~30代の嗜好に与えた影響は否定できない。いくつかの雑誌によると、「ベヨネッタ」メガネが流行ったのは彼女がきっかけだそうだ。もちろん、モデルのガブリエットのように、他にも寄与している人はいる。ただ、SNSがなければベヨネッタメガネはこれほどの成功を収めただろうか。他にもZ世代が就職しはじめたとか、ミニマリストの美学が復権して長年のストリートウェアの隆盛に少し穏やかさをもたらしたといった事情もあるだろう。いずれにせよ、メガネもファッションアイテムとして、いよいよ見過ごせない領域に入りつつある。
text : Sarah Renard (madame.lefigaro.fr)