湖西・遠州灘海岸周辺 松枯れ、さらに拡大 対策強化も静岡県有林7割被害 県など再生へ植樹検討開始
湖西市の遠州灘海岸周辺でカミキリムシが媒介する松くい虫(マツノザイセンチュウ)の被害が拡大し、国道1号バイパス沿いの防災林の環境に影響を与えている。静岡県西部農林事務所によると、国道1号新居弁天インターチェンジ(IC)―大倉戸IC間にある約20ヘクタールの県有林では2024年末までにクロマツの約7割が枯れた。松林を管理する県と市、東京大の3者は枯れマツの伐採や薬剤の樹幹注入を進めながら、林の再生に向け植樹の方法を検討する協議を始めた。 浜名湖の今切口から県境まで約10キロの海岸には、砂の飛散や塩害を防ぐため東京大演習林と県有防災林、市の海岸保全林が整備されている。松枯れは19年度ごろに東側から始まり、23年度には新居弁天地区で拡大した。市は23年度から集中的な伐採や樹幹注入の費用を予算化。24年度に約620本を伐採し、県も約2400本を処分した。松くい虫防除の薬剤散布も、従来の地上散布から無人ヘリに切り替えて実施した。
しかし、カミキリムシのふ化前に行う必要がある枯れマツの伐採と焼却処分が追いつかず、24年の夏から秋にかけさらに西側へ松枯れが拡大。大倉戸IC周辺や浜名川沿いでも多くのマツが枯れた。東京大演習林に近い住吉地区の鈴木愛子自治会長は「空気が乾燥しているため火災が起きたり、枝が落ちたりしないか心配」と不安を抱く。 市は24年度の予備費でさらに樹幹注入の費用を確保し、市議会12月定例会に上程した一般会計補正予算案に浜名川沿いや白須賀地区の保全林での伐採費用を計上した。県も24年秋に約千本の追加伐採を発注し同様の対応を進めている。 カミキリムシの幼虫が育つ枯れマツの処分は段階的に進む見通しだが、伐採により防災林の機能が低下する側面もある。県と市、東京大生態水文学研究所(愛知県瀬戸市)の3者は24年12月から防災林再生に向けた協議を開始し、現地調査を行った。今後は再生への計画を作り植樹に取りかかる方針という。 静岡県内の防災林は松くい虫に強い抵抗性クロマツを植え直すのが一般的だが、松枯れが進んだ場所ではトベラやシャリンバイなど潮風に強い常緑樹が自生する様子も確認された。同事務所森林整備課は「砂地や潮風が吹く環境に適した木を選定し、防災林の機能回復を目指したい」としている。