『東京タワー』永瀬廉の瞳は言葉以上に物語る “出会ってしまった”2人の恋の始まり
男子大学生の透は永瀬廉だからこそ成立しているキャラクター
20歳以上歳の差がある詩史の前でも物怖じせず、しかし背伸びして自分のことを必要以上に大きく見せるでもない自然体の透。美しい言葉の節々から知的好奇心が滲み、大人びた雰囲気や静けさと積極性を併せ持ち、勘所の良さまである。そんな稀有な男子大学生の透は永瀬ゆえに成立しているキャラクターだろう。相手に対して極端に精神年齢が低く見えてはそもそも成立しないが、これから新たな扉が開かれていくのだろう伸び代やポテンシャルは残しておかなければならない。簡単に自分を明け渡さず、しかし相手のことをフラットによく見ながら呼応する透の対峙がそんな難しい塩梅を内包していた。 詩史から「会うのはこれで最後にしましょう」と言われて、本当にこのままではこれが最後になってしまうと焦燥し、一歩踏み込む透の心情を永瀬は視線の動きだけで表現していた。「なんでも自分で決めるんだ」「提案じゃない、決定なんだ」とは透が大原耕二(松田元太)に力説していた彼女の魅力だが、今ここで行動に移さなければこれが“決定事項”になってしまうということが反射的にわかったのだろう。そして直感的に強く湧き出る感情ほど、時に自身を大胆な行動に駆り立てるものだ。 さて、“出会ってしまった”2人にこれからどんな運命が待ち受けているのだろうか。東京タワーの朧げな光は、彼らのどんな煌めきと悲哀を照らし出すのか、没入しながら見守りたい。
佳香(かこ)