せっかく買ったのだから。もったいないから。…不幸になりやすい人・損しがちな人の思考パターン【経済評論家が助言】
自分の愚かさを認めたくないばかりに、不幸せな道を行くのは…
こんな本を買った自分が愚かだった、食べ放題の店を選んだ自分が愚かだった、などと考えるのは嫌なものです。だからといって、わざわざ不幸せになる選択肢を選ぶ必要はありません。 「他人に愚かだと思われたくない」というのはよくわかりますが、自分で自分のことを愚かだと思いたくない、というだけの理由で不幸になるのは避けたいですよね。 企業の場合も同様です。工場が7割完成したところでライバル企業が画期的な新商品を発売し、工場で予定していた製品が売れないことが明らかになったとしましょう。「いままで使った工事代金がもったいないから完成させよう」と考えると、工事代金の7割ではなく、10割損することになりますから、キッパリ諦めて工事を中止すべきでしょう。 もっとも、組織の意思決定の場合には、サラリーマンとしての処世術も絡むので、慎重に判断しましょう。工場建設を推進していたのが社内の実力者だったりすると、工事中止を進言したことで社内での地位が危うくなるかもしれませんから。
「株の損切り」も同じこと
株式投資をしている人から「1,000円で買った株が800円に値下がりしたが、どうすべきか」「500円で買った株が800円に値上がりしたが、どうすべきか」といった質問をされることがあります。 筆者の答えは「いまから新しく株式投資を始めるとして、その株を買いますか?」です。1,000円で買おうと500円で買おうと、株を買った時点で支払った代金はサンクコストになるわけですから、いまから自分が幸せになるための意思決定には関係ありません。 「その株は値上がりすると思いますか?」という質問を返すのでもよいのですが、「その株は値上がりすると思いますが、ほかにもっと値上がりしそうな株があります」という場合には、やはりその株を売って、別の株に乗り換えるべきでしょうから。 投資初心者は損切りが下手だといわれます。買った値段より値下がりすると、「いま売ったら損が確定してしまう。それは嫌だから、買い値まで戻るのを待とう」と考えるわけです。 そのまま値下がりを続けるのを傍観して大きな損失を被る場合もありますし、買い値まで戻ったところで無事に売り抜けて損を取り戻す場合もあるでしょう。「やれやれ売り」などといわれるものですね。 しかし、株が下がったときにするべきなのは「株価は戻るだろうか?」と考えることであって、「戻ることを祈りながら待つ」ことではありません。 同様に、買い値に戻ったときにすべきことは「上がると思って買ったのだから、持っていたいが、買ったときの判断を変更しなくていいだろうか?」と自問自答することであって、「やれやれ、損をせずにすんだ。こんな株は見たくないから、急いで売ってしまおう」と考えることではないのです。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義