『港区女子』は港区在住ではない。知られざる港区女子の世界を当事者にインタビュー
私が港区女子になるまで
――岸さんはなぜ港区女子になったのでしょうか? もともと私は九州出身で、一人娘でした。父親が医者だったこともあり、地元では比較的裕福な暮らしをしていたのですが、高校1年生の時に突然父が亡くなりました。「早く自立しなきゃ」という気持ちが芽生え、上京を決めました。 ――そこからなぜ港区との縁ができたのでしょうか? 上京してすぐに、マッチングアプリで出会った男性とつき合うことになりました。彼は芸能関係の人で、彼の活動拠点である港区に足を運ぶようになって。 ――恋人経由で港区が身近なエリアになったのですね。 そうですね。そこでどんどん人脈が広がりました。彼とはすぐに別れましたが、そのタイミングでお金持ちの知り合いを増やそうと思い、マッチングアプリを使って、1000人近くの男性に会いました。 ――恋人づくりが目的ですか? いいえ。人脈づくりを重視していました。女性ひとりで東京で生きていくために、持つべきものは恋人や友達ではなく、お金持ちの知り合いだと思っていたんです。 年収3000万円、40代以上に絞って検索していました。そういう人はみんな港区に集っているんです。彼らに会い、港区でさらに人脈が広がっていきました。 しだいに男性から「よかったら今度飲み会しない?」と持ち掛けられるようになり、自然とギャラ飲みをセッティングするようになりました。 ――現在、岸さんに恋人はいない? 芸能関係の彼と別れてからはずっといません。 ――今後も恋人がほしいとは思わない? 思わないですね。毎日いろいろな男性と会っているので、特定の人と付き合いたいと思ったことがないんです。
港区女子の恋愛事情。華やかな世界を知ってしまった後に
――昨今、“港区女子”はよくSNS上やネットニュースの話題にもなりますよね。彼女たちは幸せなのでしょうか。 ごく一部、ギャラ飲みで出会った年上のお金持ちの男性と結婚して、セレブ生活を送っている港区女子もいますが、私の知るかぎり幸せそうな女の子はほとんどいないですね。 ――港区女子と富裕層男性が、リアルな恋愛関係には発展しにくいということですか? はい。港区女子の多くは基本的にルックスがよく、若さや美しさでちやほやされて生きてきた20代女性です。一方、ギャラ飲みに参加する男性は、40歳以上のお金持ちの既婚者が多い。 ――男女に年齢差があるうえに、既婚者が大半となると恋愛対象にはなりえませんね。 港区女子たちは、最初は男性から猛アプローチされ、贅沢を覚えます。でも、男性たちは、次の新しい港区女子がくれば、そちらに目が行くようになる。港区女子は、年上の男性の同世代の男性にはない経済力や包容力に魅了され、疑似恋愛を楽しみますが、結局は若さや美しさを引き換えにしているだけ。年齢を重ねていくうちに男性に相手にされなくなり、心を病んでしまう港区女子は多いように思います。 ――シビアな世界だと感じますか? そうですね。きらびやかな世界を知ってしまったが故の、不幸なのかもしれません。 だけど上京せず地元にいたら、港区の楽しみを人生で体験することはない。どちらがよかったんだろう? って最近よく考えますね。港区女子の世界は、知らないほうが幸せなのかもしれません。
取材・文/毒島サチコ