ブラックマヨネーズ、殺伐とした20年前経て思う「賞レースの大切さ」
■ 心のなかには絶対にライバルはいる(小杉)
──特にお2人が『M-1』や賞レースなどで活躍されていた2000年代初期は、漫才バトルの土台がグッとできあがってきた時期。今と少し違うなと感じたりしますか。 小杉:今みたいに短いネタでポンッと若手がメディアに出ることはなくて、当時は本当に賞をきっかけにするしかなかったんです。ネットの動画とかもなかったし、ショートネタで取り上げられたりもしなかった。みんな賞に賭けていた。そういう時代だったので殺伐とした雰囲気もあって、全員が根を詰めてやっていました。 吉田:だからあの当時は、とにかくフットボールアワーにはほんまにイライラして! ──そんな、名指しですか?(笑) 吉田:コンクールの決勝とかで、1ボケ目、2ボケ目が「あいつら、いつもほどウケてない」ってなっても、そのあとちゃんと爆笑を取りよるんです。絶対にスベらへん。フットボールアワーの間違いのなさにはイライラさせられましたよ。確実に来よるから。 小杉:賞レースではみんな「ライバルはいません」とか言うじゃないですか。でも心のなかでは絶対に誰か意識してるはずですよ。僕らはフットボールアワー、チュートリアルでしたね。しかもフットボールアワーが賞を総ナメみたいにしてたから。ホンマに嫌でした! 吉田:何があっても絶対に1分あったら取りかえしてきよるからな。 ──現在のお笑いシーンは、大型の賞レースが増えてそれを中心に1年が動いているところがありますよね。 吉田:その分、ストレスはすごいでしょうね。ただ、それがないと整理されへんところもあるから。僕らもしんどかったけど、今思ったら「あって良かった」って。『M-1』や『ytv漫才新人賞決定戦』みたいなコンクールって「厳しすぎる先生」なんです。終わってみたら「できることが増えてました、ありがとうございます」って。その経験が今、子育てにも生かされてますから。 小杉:ちょっと待って、新人賞の経験が子育てに生かされてんの?(笑) 初めて聞いたんやけど。 吉田:子どもに自転車の練習させたりするやん? 嫁は「もうええやん」と言うけど、俺は「まだや。もうちょっとやらなあかん」と粘るんです。そのとき「あぁ、新人コンクールってこんなんやったな」ってなりますよ。 小杉:おかしいやろ、その主催側の目線の感想(笑)。子どもの自転車に集中せぇ!でも賞レースみたいな厳しい経験って、その先の平場とかにも生きるんですよね。賞レースを通してコンビの方向性や向き合い方にも気付けるものがある。逆に仲が悪くなるかもしれない。何にしても自分らだけでは見えてなかったことが、見えてくるもんなんです。 ──よく「『M-1』のグランドチャンピオン大会とかあったら」みたいなお笑いファンの妄想があったりしますよね。もしそういう大会があったらどうですか。 吉田:いやあ、もうそれは・・・。スイッチが変わってもうてるんで。僕らはおもろい漫才を作ることしか考えてないですね。 小杉:ファンのみなさんがそうやっていろいろ妄想するのは楽しいと思うんですけど、さすがに賞レースに出てたのが20年くらい前なんで、その幅でやるのはきついですね。 吉田:もしグランドチャンピオン大会があったとして「4分ネタをやれ」と言われても、今の僕らは「そこで見せる強い4分ネタよりも、劇場で爆笑がとれる10分ネタの方がもっとほしい」って考えちゃいます。欲しいものがあのときとは違うんですよね。 ──なるほど。 吉田:たとえ賞金1億円とか用意されても・・・優勝したらコンビで5000万ずつで、いろいろ差し引かれて・・・。あかんわ、5000万円もあったら人生が変わりすぎる。この話はやめましょ。ありもせえへんことでちょっと悩んでしまいました(笑)。 小杉:その分、『ytv漫才新人賞決定戦』で若手ががんばるところを見守りたいですね。 ◇ ブラックマヨネーズが新MCを務める『漫才Lovers』は2月4日・夕方4時~、『ytv漫才新人賞決定戦』は3月(放送日未定)に放送される。