『ブルーロック』『バババ』など放送の新アニメ枠 IMAnimationはアニメ産業の新機軸に?
テレビ朝日がとらえる、アニメ産業のビジネス的特徴
ーーアニメを取り巻く状況はここ数年で特に大きく変化しています。それはテレビ局各局の動向を見ても思うところですが、特にテレビ朝日さんにおいてはアニメというジャンルについて、どのような位置付けにあるのでしょうか? 小野:正直に言うと、まずテレビ番組の王道であるドラマの状況が変わってきていると思います。放送してすぐTVerで観ることができて、あるタイミングでNetflixなどでも観れたりとか。いわゆるリニアでの放送をきっかけに、映像ビジネスのモデルがかなりシフトしていると思っているので、視聴環境についてはアニメだけが変わってきているということはないかと思っています。ただし、映像ビジネスという点で言うと、アニメの素晴らしさというのは、ライセンスビジネスがあったり、グローバル展開ができるところです。この2点については他のジャンルとは全く違った商流で、マネタイズするスキームが確立されている唯一のジャンルだと思っています。きっとこのアニメのありようが、今後、ドラマやバラエティの世界戦略であったり、ビジネスフォーマットの叩き台になる。それくらい重要視されている気がします。 ーー放送後も広がっていく可能性をより大きく秘めているのが、アニメというジャンルの特徴かもしれません。 小野:もちろん、テレビ朝日の場合、今の全社的な売り上げからすると、別に一翼を担っているような金額ではありません。ですが、きっと今後のテレビ局の生存戦略の中で、コンテンツの儲け方、コンテンツの制作費に対して回収するポートフォリオの中の1個として、生きる道を示してくれるかもしれない。そう思われていると僕は感じてますし、そうなればいいかと思っています。 ーーまた、IMAnimationで放送時間帯が早くなることで視聴者層も変化しますね。 小野:ちょうどドラマをやっていた枠から移ったわけですが、別にもとの枠の視聴者から奪いたいとかではなく、やっぱり今までアニメを観ていなかったような人たちにも接触してほしいんです。元々の原作のファンの方やアニメのファンの方はもちろんですが、それ以外の層の方にもしっかり観せることができる放送枠だと思っているので。原作もので言えば預かった作品のファンがさらに増えることが成功だと思っているので、そういう枠になってほしいと思っています。 ーーそうした視聴者層の変化にもつながるのですが、アニメの宣伝戦略について、テレビ局ならではの利点や課題はありますか? 小野:テレビの良さはやはりありつつも、やっぱりそこに甘えてはいけないと思うんです。マス媒体だといわゆるコアなアニメファンを置き去りにしてしまう可能性があるので。やっぱり、“一番初めに火がつくのは誰なんだ?”というところが大事じゃないですか。アニメ作品を大好きになってくれる人。テレビを好きだという人って本当に広く浅くて、中にはもちろん濃い人もいるし、あるタレントさんが大好きで観てくれる人もいますが、大多数がなんとなく観てる方たちにも観せているのがテレビなので。ですので、“発火する人”をちゃんと抽出して見つけて、その方たちにしっかりと観ていただく。マーケティング自体を、もしかしたらテレビ局がやってるんだけれども、ちゃんと情熱を持っている人に刺していくやり方をしっかりと開発しなくてはいけないのかと思っています。 ーー放送時間が早まるトレンドによって、アニメ業界においてテレビ局が果たす役割がより大きくなっているように感じます。テレビ朝日さんの今後のアニメ事業の見通しを教えてください。 小野:すこし前はアニメは“本当に好きな人のためのもの”だったものが、いまはより広く誰でも観られるような環境が整ってきました。だからといって、より当たりやすくなったとも逆に思ってないんです。そこは今までのアニメファンの方々にちゃんと気持ちを伝えに行って、なおかつテレビはどんな人でも観れる、観させられることができる媒体ですので、アニメに対してライトな愛を持つ方々やにもちゃんと届けること。その両輪でやっていかないといけないと思っています。いま、まだ発表できていない新しい作品がたくさん進行中です。これからのテレビ朝日のアニメにぜひ注目してもらえると嬉しいです。
間瀬佑一