岸本斉史と池本幹雄、『NARUTO』の物語を描く二人の登場にフランスのファンが大興奮! 巨匠たちが語る「物語制作の裏側」
岸本斉史が『BORUTO』に思うこと
岸本と池本の訪仏は一大イベントとなった。それもそうだろう。岸本斉史が前回、日本国外で催されたイベントに出席したのは2015年の秋に遡る。『NARUTO』の連載が終わってから1年後のその年、岸本はニューヨークに行き、その地のファンと会ったのだ。 ただ、その頃から『NARUTO』の物語の続きを描いているのは、岸本の元アシスタントである池本幹雄だ。岸本自身は、池本が描く漫画の「最初の読者」として、自分が創作した世界がどうなっていくのかを観客の一人として見ているだけだという。 「『BORUTO』は、最初に僕がちょこっと構想とヒントになるものを渡しただけです。3巻まで僕が話を考えましたが、あとは池本君が全部、ストーリーも絵も考えてやっています。いま僕は偉そうにチェックするだけです」 岸本はル・モンド紙のインタビューに対して笑いながら言う。 「僕は(『BORUTO』を)もう少し短くできるかなとは思うんですけれど、池本君がどんどんアイデアを出して、キャラも増やすし、ストーリーも広げるので、『大丈夫なのかな』、『最後まで体力が持つかな』とも感じたりします」 『BORUTO』はもともと、日本で2015年に公開された長編アニメ映画として作られ、漫画の連載は、その映画の後に始まった。週刊連載という尋常でないペースで仕事をしていたときと同じで、岸本には、『BORUTO』の構想をじっくりと練る時間はなく、アイデアをいくつか出して、あとは流れに任せて物語を発展させることにしたのだ。
作品でも、私生活でも「家族」が大事
通常、日本では漫画作品の寿命を決めるのは読者だ。雑誌が定期的に読者アンケートを実施するのである。『NARUTO』の世界では、耐え忍びながら物事をやり遂げる力を「火の意志」と呼んでいる。岸本が恥じらいと遊び心の両方を示しながら言ったところによれば、岸本自身がそんな「火の意志」を保つうえで「重要だったのは家族」だった。 「『BORUTO』の映画の脚本を書いたときは、長男がちょうど反抗期だったんです」 岸本はときどきナルトに自分を重ねており、そのときどきの自分の私生活が「作品にリンクする」こともある。 家族というテーマは、『NARUTO』だけでなく『BORUTO』でもたびたび顔を出す。ボルトにとって最大の困難は、偉大な忍者の息子として特権的立場にある自分の価値をどうやって証明するか、というところだ。 岸本斉史の描く世界には、兄弟の対立も頻繁に出てくる。これは岸本自身に、漫画家である双子の弟がいることを思うと、些末な話には思えないかもしれない。だが、岸本斉史は、家族のテーマに関しては、読者が感情移入しやすくするためだったと説明する。 「親子の話も、兄弟の話も、どちらにしても、みなさんが共感できるものです。誰しも親や兄弟がいますが、ただ、いつも家族仲良しというわけでもないと思うんです。父親と息子の問題や兄弟の問題、それは友達との問題に置き換えてもいいのだけれども、そういった問題は、別に忍者だけでなく、どんな家族にもあるじゃないですか。だから、そういったところを共感できる部分として書こうとしているだけです。 ただ、僕の漫画はテーマとして忍者を扱っているので、それを踏まえて言うと、お互い我慢するというか、耐え忍ぶというか、お互い思い合う、痛みを分かち合う、お互いを理解し合うということが大切なのかなと。これは僕が作品の最後のテーマとして描きました」(続く) 後編では、話題の中心は『BORUTO』へ。本作の制作の難しさや『NARUTO』との違い、そしてその魅力を二人が語ってくれた。
Pauline Croquet