「人材募集で応募者ゼロ」も、人手確保に苦しむ中小企業。大阪シティ信用金庫調査/大阪
好況感などから人材不足が指摘される中、中小企業の一部では、求人募集をしても、応募がまったくない深刻な状況に直面していることが、中小企業を対象にした大阪シティ信用金庫(大阪市中央区)の人手不足対応調査で明らかになった。人手の確保が間に合わず、絶好のビジネスチャンスを逃しかねないケースが心配される。
応募者がいないから人手不足が解消できない
調査時点は7月上旬。調査依頼先数1440社のうち、有効回答数は1425社で、有効回答率は99・0%に達する。大半が従業員50人未満の中小企業だ。しかも同信金職員が担当取引先に出向いて直接聞き取りしたデータが中心なので、中小企業の生の声をしっかり反映している確率が高い。 人手の過不足感を聞いたところ、「過剰」は1・9%だけで、「ほぼ適正」が70・5%。「不足」と答えた企業は27・6%と、3割に近かった。「不足」企業を業種別にみると、運輸業37・4%、建設業37・1%が高かった。 「人手不足」と答えた企業に、従業員募集の実施状況を確認したところ、「募集をかけている」企業は64・3%、「募集に対し応募がない」と答えた企業が16・1%だった。 つまり、せっかく人材募集をしても、4社に1社の割合で、応募者がまったく現れず、人手不足を解消できていない。
人材争奪戦で小売業の苦戦目立つ
業種別にみると、募集しているものの、「募集に対して応募がない」企業が、小売業で半数に及んだ。商店街の自営店舗を含めた中小小売業が、人手確保にもっとも苦戦しているようだ。経営に余力がないため、給与引き上げなどの待遇改善が遅れがちだからとみられる。 さらに、「人手不足」と答えながら、「先行き不透明などで募集を控えている」企業も、35・7%と多かった。調査担当者は「企業が人材を募集しても応募がまったくないという厳しい状況は、過去の好況時でも、あまり経験したことがないのではないか。景気動向の他にも、生産年齢人口の減少などの構造的な要因が連動し、中小企業の人材確保が難しい局面が続きそうだ」と分析している。 大阪再生の原動力は中小企業。意欲のある中小企業に、人が集まる仕組みが求められる。 (文責 岡村雅之/関西ライター名鑑)