企業のインフレ期待は2%超を維持、物価目標実現の確度高める材料に
(ブルームバーグ): 日本銀行が掲げる2%の物価安定目標の実現に向け、重要指標の一つである企業のインフレ期待は堅調な推移を続けている。サービス価格や中小企業の賃上げ動向など重要データを見極めつつ、次の利上げのタイミングを探る展開が続きそうだ。
1日に発表された3月の企業短期経済観測調査(短観)の「企業の物価見通し」では、企業が想定する消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が平均で1年後2.4%、3年後2.2%、5年後2.1%といずれも前回の昨年12月調査から変わらず、2%超を維持した。5年後が2%以上となるのは7四半期連続で、先行きも2%程度のインフレ率が続くとの企業の見方が定着しつつある。
企業の販売価格見通しは軒並み上昇した。現状の水準と比較した変化率は1年後が2.7%と前回調査の2.6%からプラス幅が拡大。3年後と5年後は4.0%、4.7%で、ともに0.3ポイント拡大しており、人件費上昇を価格に転嫁する動きを反映している可能性がある。
植田和男総裁は、17年ぶりの利上げを決めた先月の金融政策決定会合後の記者会見で、日銀が重視する中長期の予想物価上昇率は「おそらく1%から1.5%の間のどこかにある」と指摘した。家計や市場関係者などの予想も含めた試算とみられるが、今回の短観で企業のインフレ期待が高水準を維持していることが確認され、物価目標実現に向けた確度の高まりをサポートする材料となりそうだ。
総裁は「基調的な物価が上昇していけば、 だんだん緩和の程度は縮小していく」と述べ、インフレ期待など物価基調の上昇局面では利上げで緩和度合いを調整していく考えを示唆した。物価見通しの上振れや上振れリスクが高まる場合に利上げを検討する可能性にも言及しており、今月25、26日の会合も含め、今後公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示す物価見通しやリスクバランスにも注目が集まる。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストはリポートで、3月短観では堅調な企業収益や価格転嫁の動きが確認され、中期的な物価見通しも2%超えを維持したと評価。「高水準の賃上げの影響がサービス価格等に反映されるには、まだ時間を要する」とし、日銀の追加利上げの可能性があるのは9月か10月の会合とみる。