「余命10年と知らされたのはラッキー」多発性骨髄腫と診断された岸博幸が、いま大切にしたい2つのこと
● 「仕事だから」 「家族のため」をやめた まず気づいてすごく反省したのは、ここ10年くらいは、かなり妥協して生きてきたということ。誤解を恐れずに言うならば、「仕事だから」とか「家族のため」とか、自分以外のものを優先して生きてきた。いや、それを言い訳に、自分が本当にやりたいこと、やるべきことをやらなかったというのが正しいかもしれない。 でも、僕の人生は70歳で終わってしまう可能性が高いのだ。だったら、本来の自分らしい生き方を貫こう。 そこで心に決めたのが、残り10年は、“ハッピー”と“エンジョイ”という2つを追求して生きるということ。自分自身が毎日を“ハッピー”に過ごせるように、そして、自分らしいやり方で残りの人生を正しく“エンジョイ”しようと決心したのである。 “ハッピー”と“エンジョイ”、この2つの言葉は、同じ意味に思われるかもしれない。でも僕にとっては、全然違うもので、それぞれに大切なものだ。 “ハッピー”とは、周囲に気兼ねするのはやめ、自分がやりたいこと、やるべきだと思うことを最優先にし、日々の自己満足度を高めることだ。 これに対して“エンジョイ”とは、チャンスがあれば積極的に新しい世界に飛び込み、今までと違った経験をし、人生の幅を広げるということ。 ちょっとわかりづらいかもしれないが、仕事にたとえるなら、新卒から定年まで同じ会社に勤め上げるのではなく、さまざまな職種や業種を経験することで、自分の世界や体験を広げるというイメージ。そうすることで、1度きりの人生を、2度、3度楽しめる気がしているのだ。 こうした考えは、かなり身勝手だと自覚している。でも、実は“ハッピー”も“エンジョイ”も、かつて僕が生き方の軸としていたのに、いつのまにか追いやっていたものでもある。 それに気づく機会を与えてくれたのは、多発性骨髄腫という病気だ。余命10年となったおかげで、自分の今後について真剣に考えることができたのだから、僕はある意味、とてもラッキーだ。だから、この病気には感謝しなくてはいけない。今は真剣にそう思っている。