福井県大野市が東ティモールの給水設備設置を支援へ
福井県大野市は26日、清潔で安全な水源の確保に苦しむ東ティモールに対し、日本ユニセフ協会を通じて給水システムの設置を支援すると発表、パートナーシップ締結の調印式を行った。市は、3年間で総額30万ドルを提供する予定。
3年間で総額30万ドルを提供へ
大野市は、福井県東部にある人口3万4788人(1月1日現在)の都市。古くから湧水が豊かに湧く地域であることから、市は「水」を街の財産かつアイデンティティーと位置付け、2015年5月より「キャリング・ウォーター・プロジェクト」を開始。地域創生に向けたブランディング活動を展開している。 このプロジェクトは、水に恵まれた市の情報を世界に広く発信するとともに、市民が水への誇りと自信を再認識することを通して、新たな産業基盤の創出や人材育成などを図り、中長期的に人口減に歯止めをかけることを目的としている。 今回の東ティモール支援は、同プロジェクトの一環。市が、水を通じた国際的な貢献活動をブランドを確立するための主要事業と捉えて検討を進め、実施を決めた。 2012年のユニセフの統計によると、改善された飲用水源を利用する人の割合は、世界各国の平均が89%、日本は100%なのに対し、東ティモールは70%とアジアで最下位。水環境の厳しさをうかがわせる結果となっている。 支援期間は2017年1月から3か年。支援の内容は、山の湧き水を水道管でふもとまで供給する「重力式給水システム(GFS)」を1年に2基、3年間で計6基設置するというもの。文字通り、重力を利用することによって、標高の高いところにある水源から、標高の低いところにある人里まで水を供給する。 設置対象の地域は同国のエルメラ、コヴァリマの両県。今後、地元当局などと連携の上、GFSを導入する6つの学校・地域を決め、地域住民が自分たちでシステムを設置・管理できるよう、行動計画の策定を手助けする。6基全体で、児童・生徒約1500人と地域の人々約1800人の計約3300人が安全な水を利用できるようにする計画。なお、事業費については、市が寄付を募ったりさまざまな募金活動などを通じて、全額を支援することとなっている。 市は、今回の取り組みを通じて、水について困難を抱える地域と関係を深めることで、市民が自らのアイデンティティーをより深く理解するきっかけにするとともに、一人一人が「水への感謝」を行う機会になるものと期待している。 大野市の岡田高大市長は、当日の記者発表会で、「今までに例のない取り組みであり、覚悟と決意を持って取り組みたい」と意欲を見せた。また、日本ユニセフ協会の赤松良子会長は、「世界中の人たちに、日本では一つの市がこういう素敵なことを考えたのですよ、とお知らせできればと良いと思う」と期待を込めた。 (取材・文 具志堅浩二)