Saucy Dogが念願の全国アリーナツアー完走 最終公演のオフィシャルレポートが到着
昨年11月の長野を皮切りに、全9カ所・15公演を周ってきたSaucy Dogの全国アリーナツアー『It Re:ARENA TOUR』。そのファイナルが、3月31日(日)、Kアリーナ横浜で行われた。 【全ての写真】Saucy Dogの全国アリーナツアー最終公演(全16枚) ライブ中にせとゆいか(Ds/Cho)の口からも語られたように、全国アリーナツアーを開催するというのは石原慎也(Vo/Gt)が以前から言葉にしてきた目標であり、Saucy Dogチームにとっての念願だった。その目指し続けた場所で、彼らが見せたのは、力強くスケールアップした演奏と求心力、そして、そうやって大きくなるにもかかわらず変わらずにオーディエンスに寄り添い、すぐ近くでおしゃべりをするように音楽を届ける姿だった。 リスナーの毎日のそばにそっといるようなサウシーの音楽のありかたを象徴するオープニングムービーからつながるようにして、ステージから聞こえてきた1曲目は「魔法にかけられて」。ムービーによって歌詞の物語がさらに印象的になり、楽曲がよりドラマティックに伝わってくる、美しい幕開けだ。 続く「マザーロード」は夕日のようなオレンジの光とともに届けられる。演出が、曲順が、まるでひとつながりのドラマのように大勢のオーディエンスの感情を盛り上げていくのがわかる。そしてそのドラマに、石原、秋澤和貴(Ba)、せとの3人の強固なアンサンブルが説得力を与えていく。 「あぁ、もう。」や「優しさに溢れた世界で」、「雀ノ欠伸」と、今のサウシーのライブに欠かせない楽曲を次々と届けてハンズクラップやシンガロングで会場をひとつにすると、満面の笑みを浮かべた石原が「今日という日をめちゃめちゃ楽しみにしてきました!」と挨拶。オーディエンスの大歓声に「みんな、声が涸れちゃうよ?」と応えたせとは、冒頭に書いたとおり、初めてワンマンツアーを周った頃から、石原がアリーナツアーを目標に掲げていたことを語る。 「そのときは『何言ってんねん』って思ってたんですけど、慎ちゃんはそれをずっと言ってて。気づいたらそれがバンドの夢になっていたんです」。石原が掲げていた「全国アリーナ2デイズ、即完」というところには今回はあと一歩届かなかった、と付け加えながらも、「夢に近づいてきてるんやな」と感慨深げな表情を見せた。 ここで、石原が「新しいワクワクを来てくれているみんなにも味わってほしい」と、このツアーでは初めてサポートギターを入れてライブを行っていることを伝える。そうしてそのギタリスト・作田泰地を迎え入れ、「ちょっと季節外れだけど」と披露されたのは「サマーデイドリーム」だった。季節外れどころか、この日の関東地方は夏を先取りしたかのような暑さだったのでむしろぴったりだ。 それにしてもこの曲のスケールの大きさには驚いた。鉄板のトライアングルにギターが1本加わるだけで、こんなにも豊かに変わるのか。といっても、アレンジやグルーヴが大幅に変化しているわけではない。全体的に厚みと密度が増したようなサウンドだ。この後もところどころで作田のギターがバンドを支えていくのだが、どの曲もアリーナにふさわしいパワーを発揮していた。 「サマーデイドリーム」に続いては、「誰がなんと言おうと、俺らにとって、あなたと出会わせてくれた大切な歌」という石原の言葉とともに「シンデレラボーイ」へ。イントロのギターが鳴り始めた瞬間に静かな拍手がアリーナ一面に広がった。そこから「いつか」、そして「魔法が解けたら」へと、楽曲がひとつの恋の終わりを描いたひと続きの物語のようにして奏でられていく。 もちろんそれぞれの曲は作られた時期も背景も主人公の性別も違うのだが、それが映像演出も含めてこうしてつながっていくところに、石原慎也というソングライターの幹みたいな部分が透けて見えるようだ。物語の最後を飾る「魔法が解けたら」では再び作田のギターが3人のサウンドに厚みを足して力強く「次」へと向かっていく主人公の姿を浮かび上がらせてみせた。 そんなセクションの後は恒例のアコースティックコーナー。せとがキーボードを弾きつつ歌う「へっぽこまん」、そしてせとが「今いちばん大事にしている曲」だという最新作『バットリアリー』のボーナストラック「星になっても」。すっかり定番となったこのコーナーだが、アリーナでもその「近さ」はまったく変わらない。3人の関係性、ファンとの向き合い方、いろいろな意味でとてもサウシーらしい空気が生まれる瞬間だ。そのアコースティックコーナーを石原が歌う「届かない」で終えると、ライブはクライマックスへと突き進んでいった。