地下鉄中央線で活躍していた20系の第1編成ひっそり引退/大阪
大阪の地下を縦横無尽に結び、人々の足として活躍する大阪市営地下鉄。昨年には大阪万博に合わせて導入された名車・30系が引退し、大きなニュースとなりました。一方で、新型車両30000系が谷町線に続いて御堂筋線にも導入され、同線の10系が順次引退していくことになっていますが、そんな中で大阪市営地下鉄の「名車」が1編成、ひっそりと姿を消したのをご存知でしょうか。
その名車とは、中央線で活躍していた20系の第1編成。1984(昭和59)年に製造が開始された20系は10系車両に似た形状ですが、前面が当時流行だったブラックフェイスとなっているのが特徴です。 そしてこの車両の「名車」たる所以は、VVVFインバーター制御方式を採用した日本初の普通鉄道車両というところ。現在ではほとんどの電車に採用されているVVVF方式は、1970年代後半から開発が進められ、1982年に熊本市電で初めて営業用車両に導入されましたが、普通鉄道で営業用車両に搭載されたのは、この20系が最初でした。 特に第1編成は量産化に向けての最終試作という意味合いも強く、当時開発に参加していた東芝・日立・三菱の3社がそれぞれ1両ずつ電動車を作ることになりました。
鉄道車両の省エネ化やコスト削減に大きく貢献
この20系の開発は、大阪市営地下鉄のみならず日本の鉄道車両の技術向上にも寄与。鉄道車両の省エネ化やコスト削減に大きく貢献しました。大阪市営地下鉄でも、現在活躍する車両は全てがVVVF方式となっています。 以来30年間、第1編成はその一生を中央線で過ごし、今年8月21日に少し早い引退の時を迎えました。引退に際しセレモニー等は行われませんでしたが、大阪市交通局のfacebookページで事前に告知が行われ、編成の前後には特製のさよならヘッドマークが取り付けられました。 昨年引退した30系に比べ、どちらかというと地味な存在の20系。しかしその功績は、想像以上に偉大なものだったのです。ちなみに今回廃車となった第1編成以外は、現在のところ引退の予定はないとのことで、まだしばらくは元気に活躍する姿が見られそうです。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる) 大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。