あなたの知らない札幌《前田森林公園》前編 人工の森30年で“自然の森”に
【北海道・札幌】人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。第7回前編は、1987(昭和62)年に開園した「前田森林公園」(札幌市手稲区)です。藤棚とカナール(運河)が有名ですが、それ以外の見どころもたくさん。同公園スタッフに、公園内に広がる森林や季節で移り変わる風景について聞きました。(構成/橋場了吾)
札幌ドーム11個分の広大な公園
前田森林公園は、札幌市周辺の山では一番高い手稲山(1023メートル)を一望できる場所にある総合公園です。広さは札幌ドーム11個分の59万7258平方メートルで、森林部分のほか野球場やパークゴルフ場などもあります。開園は1987年で今や大自然のように思われますが、1982年から10年かけて野原から森林を作り出したので、実は人の手によって作り出されたものです。 私が毎日植物や生物のチェックをしているときに感じるのは、もともと自然にあった森林を切り出して公園にしたような雰囲気です。開園から30年、いつの間にか人工の森林が自然になじんだように思います。 というのも、この公園には豊富な種類の草花・樹木が多く植えられています。草花ではエゾエンゴサクやカタクリ、ニリンソウなど、樹木ではルプルムカエデ、エゾヤマザクラ、ライラック、タニウツギなどが春から秋にかけて楽しめます。 ライラックは公園を南北に通る広い道の中央分離帯部分に植林され、花木園にあるタニウツギは最盛期にはトンネル状になります。特にタニウツギが植えられている場所はあまり知られていないのですが、私としては一番のおすすめスポットです。
「運河」を取り囲むように設置された長い「藤棚」
そして、前田森林公園の特徴は藤棚とカナールです。藤棚は全長320メートル、高さ4メートルという北海道最大級のもので、大パーゴラと呼んでいます。この大パーゴラには、ピンク・紫・白などいろいろな色の藤が混在していて、カナールを囲むように広範囲に渡っていることから、旬の時期が少しずつずれているので、1~2週間ぐらい楽しむことができます。 その藤の旬は6月初旬。最近は少し早くなってきていますが、この季節には立派な藤棚を見に多くの市民が訪れています。その大パーゴラを取り囲んでいるのが、カナールです。このカナールも全長600メートル、幅15メートルという大迫力のもの。カナールと藤棚がある風景は外国のような雰囲気もあるので、ちょっとした非日常を味わえると思います。 このカナールですが、実は公園を取り囲む道路とは平行・垂直にはなっておらず、少し斜めに設計されています。これは、カナールの北端にある展望ラウンジから手稲山を真っすぐ見渡せるようにするためです。春から夏にかけては藤棚や瑞々しい木々の葉、秋は紅葉、冬は冠雪と季節の移ろいを感じさせるカナールを筆頭に、前田森林公園には春夏秋冬を感じさせる場所がたくさんあります。 (後編へ続く)