2024年の超最新「ドローン戦術」公開! ウクライナの戦場で爆速進化中
戦術は常に戦場で進化する。昨年2月以来、ウクライナの戦場では無人機が重要な役割を担い、また両軍がさまざまな使い方を模索してきた。現在確認されている最新戦術と、その先に見えてきた"次の一手"を、専門家の分析で探ってみよう。 【写真】進化するドローンと無人機(全9枚) * * * ■ドローン戦術の進化で戦闘の枠組みが変化 昨年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まってから1年10ヵ月。各戦場で大小さまざまな無人航空機が使われ、その戦術も進化を続けている。本記事では低高度を飛ぶ小型無人機を「ドローン」、中型機・大型機を「無人機」と呼んで区別することにする。 まず注目されたのは、序盤戦でウクライナ軍(以下、ウ軍)が見せた戦術。ロシア軍(以下、露軍)戦車部隊の位置情報を偵察ドローンからスターリンク経由で歩兵に送り、待ち伏せして「ジャベリン」などの対戦車ミサイルを撃ち込む作戦がハマったことで、首都キーウに迫っていた露軍は大幅な後退を余儀なくされた。 ウ軍はさらに、撤退する露軍部隊をドローンで追跡し、「155㎜ M777榴弾砲」を叩き込んで大打撃を与えた。 しかしその後は露軍もドローンの使用を活発化させ、自爆型無人機による都市攻撃、インフラ攻撃も続いている。 そして今、ウ軍がドニプロ川を渡河(とか)して露軍占領地域を奪還しようとしている南部へルソンの前線では、ドローンを巡る「電子戦」が激化している。『Forbes JAPAN』の11月27日配信記事「ロシア軍、ドローン電波妨害装置を車両に取り付け ウクライナから学ぶ」から一部を引用する。 〈ウクライナ軍は、ロシア軍のジャマー(電波妨害装置)を標的にしながらポータブルのジャマーを設置し、渡河作戦の目標地点であるクリンキ集落の上空にロシア軍のドローン(無人機)が安全に飛べないゾーンを作り、部分的な制空権を確立した〉 これはつまり、ドローンが飛行する高度域での「局地的低空・低速航空優勢」を獲得したということだ。元陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見 龍氏(元陸将補)はこう語る。 「ドローンが歩兵や小隊に1㎞から最大数十㎞の広域戦闘能力を持たせたことで、戦闘の枠組みが変わりました。ジャミング(電波妨害)戦に打ち勝ち、自軍のドローンを飛ばし、偵察、爆撃、自爆の能力を発揮できた側が勝つ可能性が大きくなっています」 以下、ウ軍の渡河作戦の内容を、専門家の知見を基に推測してみよう。 ①敵の電波周波数を特定 深夜1時、ドニプロ川右岸でバックパック型の電子装置を背負ったウ軍電子戦特殊部隊「Aチーム」の隊員たちが匍匐(ほふく)前進を開始。 「これは敵のドローンが利用する電波を探知する装置です。バックパック型は8つの周波数帯をスキャンして探知するものが主流で、探知距離は2㎞前後。サイズの小さなハンディ型は3~4の周波数帯を探知します」(フォトジャーナリスト・柿谷哲也氏) 探知兵を敵ドローンの攻撃から守るのは、妨害電波を発射する対ドローン電子銃を持った狙撃兵数人。射程は2㎞ほどで、重さ1㎏程度のハンディ型と、6~10㎏程度のライフル型がある。