「愛メイト」が対面朗読20年 視覚障害者らに喜び提供 中央図書館【山口】
山口市中央図書館の対面朗読ボランティアグループ「愛メイト」(池田幸枝会長)は、20年間にわたり視覚障害者らに代わり文書を読み上げ、活字に触れる喜びを提供している。 2003年に開館した同館の対面朗読室を使ったボランティア団体として結成。名称の愛にはアイ(目)の意味を込めている。現在、35人が所属。毎月第1、3、4水曜と第1、3月・木曜に対面朗読室で、8人の中途失明者や高齢者にサービスを提供している。 昨年12月の利用日には池田会長(65)ら会員3人が交代で現代語訳の源氏物語を利用者の土村光子さん(81)のために読み上げていった。声の大きさを確認しながら、ゆっくりと一つ一つの言葉が聞き取れるように発声。土村さんは耳を傾けながら、場面が頭に浮かんでいることを示すようにこくこくとうなずいていた。 25年前に病気でほぼ視力を失った土村さんは、愛メイトの結成当初からサービスを利用している。高齢で中途失明者となったため、点字を読むのに苦労する土村さんは、音声読み上げ機能を持つデイジー図書なども利用するが「対面で人の声による朗読が現実感があっていい」と話す。 会員らは何か人の役に立ちたいという思いから参加した人が多い。利用者が希望する本を読むことで知らない世界に触れるのが楽しくなったと口をそろえる。 サービスの充実を図ろうと自主研修会などで学習し、可能な限り注文に応えてきた。土村さんのため、源氏物語の理解に必要な古典の知識を深め、全54巻を原語で読み通したこともある。 小説などの本に限らず、炊飯器の説明書、芸能人のファンレター、感想文の読み上げも行ってきた。茶道の手引書を録音するのに利用している清水洋子さん(68)は「AI(人工知能)を使った読み上げサービスもあるが、茶道のような専門的な単語の読み方については間違いが多い。対面での読み上げなら、すぐに対応してもらえて非常に助かっている」と話す。 県内で同様の朗読室を備えた図書館は存在するが、愛メイトのように継続的な活動は珍しいという。昨年、活動20周年を迎え、会員からはもっと活動を広げたいと声が上がっている。 22年から現職の池田会長は「利用者をもっと増やして活動を継続していきたい。自分たちの技術も高めて、より聴きやすい朗読を提供できれば」と話した。