不朽の名作『銀河鉄道999』『幻魔大戦』のアニメ版監督・りんたろう、自伝的漫画で描く日本のアニメ発展史
りんたろうが切り開いた日本のアニメ史
▪️りんたろうが切り開いた日本のアニメ史 この後、幾つかの作品を経て『メトロポリス』(2001年)へと至る自伝的なストーリーは、宮﨑監督や高畑監督といったスタジオジブリの系譜とも、富野由悠季監督の『機動戦士ガンダム』に代表されるロボットアニメの系譜とも重なっていない。それでも確実に、日本のアニメ史の本流のひとつと言えるものだ。杉井による自伝的な著書で、りんたろうにも触れられている『アニメと生命と放浪と 「アトム」「タッチ」「銀河鉄道の夜」を流れる表現の系譜』(ワニブックスPLUS新書)と合わせて読むと、もう一段視野が広がってくるはずだ。 なおかつ『1秒24コマのぼくの人生』は、バンドデシネというフランス的な漫画として描かれているため文字を読むより分かりやすい。手塚は愛嬌があり、ハーロックや鉄郎といったキャラクターはそっくりで、りんたろうの漫画家としての絵の巧さも分かる。3200円(税別)と高額だが、当初はフランス語版だけの発行と思われ、送料込みで8000円近くかけて輸入したファンもいた。日本語版はむしろお買い得。大友克洋の序文もそのまま日本語で読めるのだから。 本自体は『メトロポリス』で終わっているが、りんたろうはその後も『よなよなペンギン』(2009年)を監督し、最近も短編『山中貞雄に捧げる漫画映画「鼠小僧次郎吉」』(2023年)を監督して今も現役だ。『1秒24コマのぼくの人生』にも登場するプロデューサーの丸山正雄ともども、次の新作を期待してみたくなる。そんな思いを強く抱かせてくれる1冊だ。
タニグチリウイチ