【新大河ドラマ『光る君へ』】が待ちきれない!吉高由里子はいかにして国民的女優へ上り詰めたのか
吉高由里子は決して技巧派タイプの俳優ではない
ではその後半に強い理由は何なのか? それが先に述べた“奇跡のバランス”だと思うのだ。吉高由里子というのは、演技が決して派手なわけではないのに、どんなキャラクターを演じても見る人を飽きさせない不思議な女優だ。それどころか、むしろジワジワと彼女の魅力に惹き込まれていく。気付けば彼女が自分の身近にいる親しい存在のように感じられ始め、結果、激しく共感したり励まし励まされたりしながら作品を見るようになる。 物語が進めば進むほど支持を高めていくのは、彼女のそんな特性が一因しているのではないだろうか。そう、吉高由里子の最大の特徴というのは、絶対的な“女優”で普通の人では決してないのに、普通の人のような素朴さを兼ね備えている点だと思うのだ。だから私たちは、あくまでドラマであるという非現実性を楽しませてもらいながら、同時に共感性を持って作品に魅入らせてもらえるのだと思う。 これまでエンタメ系ライターとして私は数えきれないほどのドラマや映画を見てきたが、その中で、いわゆる“演技が上手い役者”には2つのパターンがあると感じるようになった。1つは、先天的な技巧センスを持っている役者たち。発声やリズム感、間の取り方といったプロとしての演技技術を完璧に身に付けており、彼・彼女たちがいることで驚くほど物語が引き締まる、そんな存在だ。とくに名脇役と言われる人たちを見ていると、この能力の高さに唸らされることが多い。 しかし吉高由里子というのは、実はこの技巧派タイプの俳優ではない。彼女の演技力の高さはもちろん誰の異論もないところだと思うが、上手さの質がまた違うのだ。ではどういう上手さかというと、それこそがもう1つのタイプである、“憑依型”だ。役と一体化し、そのキャラクターそのものになって画面の中で泣き笑い、躍動する。だから観る者は現実感と非現実感のはざまで、主人公に思いっきり共感し物語自体を楽しむことができるのだ。
PROFILE
書き手 山本奈緒子 Naoko Yamamoto 放送局勤務を経て、フリーライターに。「VOCE」をはじめ、「ViVi」や「with」といった女性誌、週刊誌やWEBマガジンで、タレントインタビュー記事を手がける。また女性の生き方や様々な流行事象を分析した署名記事は、多くの共感を集める。 Edited by 渕 祐貴
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