イルカの紅白歌唱曲「なごり雪」大ヒットの欠かせない要因とは レジェンドたちの演奏も
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> 第75回NHK紅白歌合戦に、シンガー・ソングライターのイルカ(74)が、32年ぶり(2回目)に出場。歌唱曲は前回と同じ「なごり雪」。 【写真】紅白歌合戦で南こうせつと「なごり雪」を熱唱 3人組かぐや姫のアルバム「三階建の詩」(74年)の収録曲で、イルカが75年にカバーした。春間近だが、名残の雪が降る季節の、若い男女の別れを描いた名曲。高校の教科書に掲載されるなど、国民的な歌として、いまも老若男女に愛唱されている。 作詞作曲した伊勢正三(73)の才能、イルカの歌唱力がヒットの原動力だが、もう1つ、欠かせない要因がある。「編曲」だ。 特にイントロ(楽曲の導入部)が絶妙である。ピアノとベースギターなどで、雪がチラチラと舞う情景を数小節で見事に表現。聴く者を、曲の冒頭から一気に引き込んだ。 松任谷正隆(73)が編曲した。松任谷由実(70)の夫で、音楽プロデューサー、キーボーディスト、編曲家、タレントとしても大活躍している。その松任谷が、初めて自身以外の人の曲のアレンジを担当したのが、イルカの「なごり雪」だったと言われている。 イルカは日刊スポーツの取材に「自分のつくった曲に関しては、ああだこうだ、うるさいこと言うんですけど(笑い)、この曲に関しては、みんなのものだから、私は責任持って歌って、あとは何も言わないほうがいいなと思っていました」と話した。 「みんなのもの」とはオリジナルのかぐや姫、そのファン。レコーディングに参加したミュージシャンらスタッフのことだ。参加ミュージシャンは、松任谷を筆頭に、いまはみなレジェンドである。 エレキギターは鈴木茂(73)。日本語ロックバンドの元祖はっぴいえんど(細野晴臣、大滝詠一さん、松本隆)の元メンバーだ。 アコースティックギターは吉川忠英(77)。中島みゆき、松任谷由実、福山雅治らをサポートするアコースティックギターの第一人者である。 ベースギターは後藤次利(72)。編曲家としても活躍し、80年に「TOKIO」(沢田研二)で、第22回日本レコード大賞編曲賞を受賞している。 ドラムは村上ポンタ秀一さん。ジャンルを超えて国内外で活躍したドラマーの第一人者だった。21年に70歳で亡くなった。 イルカは「レコーディングにはすごいミュージシャンが参加してくれた。みんな当時は、スタジオ(レコーディング)初めてなんです、みたいな感じだった。そこから、みんなビッグになっちゃう。そういう人たちがグッと凝縮して集まった瞬間だったので、素晴らしいもの(作品)が生まれる、奇跡のような場だったんでしょうね」と振り返った。 「なごり雪」が不朽の名曲になったのは、若き時代のレジェンドたちの演奏も欠かせなかった。あらためてイントロから、じっくり聴いてみたい。【笹森文彦】