明るくピュアな主人公を演じ「新しい私を見せていきたい」と語る服部樹咲（カメラ・小泉　洋樹）

　女優の服部樹咲（みさき、１８）が「ＢＩＳＨＵ　世界でいちばん優しい服」（西川達郎監督、１１日公開）で長編映画初主演を飾る。毛織物（ウール）の産地として知られる愛知県一宮市を舞台にした感動物語。演技未経験で鮮烈なデビューを飾った「ミッドナイトスワン」（内田英治監督、２０２０年）から４年。「成長した姿を見せたい」と意気込み、発達障害を抱えながら、ファッションデザイナーという夢に挑戦する主人公を熱演した。（有野　博幸） 　「ミッドナイト―」で寡黙なヒロインを演じた服部が、明るくピュアな高校生・神谷史織役で長編映画初主演。「史織みたいに明るく、かわいらしい役を演じるのは初めて。とてもワクワクしました」。台本を読んだ時から心を躍らせ、気合十分で撮影に臨んだ。 　発達障害の主人公を演じるにあたり、綿密な準備を重ねた。「クランクイン前に、発達障害を持った当事者の方に２時間くらい取材をさせていただきました。歩くことが苦手な方が多いので、史織も歩き方にクセをつけてみようと監督と話しました。動きとか表情とか目線とか、表現方法もいっぱい話し合いましたね」。歩き出しは右足から、朝食は必ずうどんなど、生活習慣のこだわりも史織の個性として描かれる。 　姉役の岡崎紗絵（２８）に助けられた。「私の実際の姉は５歳上なんですけど、すごく岡崎さんとそっくりなんです。岡崎さんは包容力があって、落ち着いた声もすてき。私と同じ名古屋出身なので、地元のイオンの話題で盛り上がりました」。親友・真理子役の長澤樹（いつき、１８）も以前から面識があり「共演できてうれしかったし、賢い方なので演技がやりやすい。とても心強かったです」と感謝した。 　愛知県一宮市を中心に、津島市、稲沢市、江南市、岐阜県羽島市などの尾州地域は毛織物の世界３大特産地の一つ。史織は機織り工場の娘だ。「事前に機械について学んだり、動作の練習をしました。尾州ウールというブランドがあるのに、知られていないのは、もったいない。私も名古屋出身だけど、尾州地域には行ったことがなかった。この映画を通じて、多くの人たちに知ってもらえたら」と映画の効果に期待している。 　４歳からバレエを習い、「ミッドナイト―」から女優の道に進んだ。自身の経験を重ねながら、ファッションの夢に挑戦する史織を演じた。「お父さんに反対されても、ファッションコンクールに出品したいという思いを貫く姿が『女優をやりたい』と勇気を振り絞って母に伝えた自分と重なりました」。経験に裏打ちされたリアルな演技は観客の心に響き、多くの共感を呼びそうだ。 　「ミッドナイト―」では報知映画賞をはじめ、多くの新人賞を受賞した。「もちろん受賞はうれしかったけど、『ここで立ち止まったらだめだな』『もっといろんな作品に出て成長したい』と思いました」。デビューした時の１４歳から１８歳になり「デビュー当時は演技未経験だったから、監督に言われるがまま、現場に立っていました。でも、あれから経験を積んで、演技の感覚をつかみました。それに昔はシャイだったけど、しゃべれるようになりました」。性格も社交的になり、成長の手応えを感じている。 　映画に対する意識も大きく変化した。「以前は『勉強のために映画を見よう』と義務的だったけど、最近は違う。映画の魅力に気付いて、演技をしたいという意欲も湧いてきました」。その中でも、特に「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」（金子由里奈監督）がお気に入り。「『ＢＩＳＨＵ―』も『ぬいぐるみ―』のように優しい気持ちになって、心が温かくなる映画になればいいな」と願っている。 　韓国ドラマも大好きで、Ｎｅｔｆｌｉｘで配信中の「二十五、二十一」に熱中している。「特にキム・テリさんが大好きで、ほかの作品も見て大ファンになりました。韓国ドラマを何回も見ているうちに韓国語も覚えました。今では専門用語以外は聞き取れて、話せるようになりました」。今後、韓国作品への出演にも「チャンスがあれば挑戦してみたい」と意欲的だ。 　バレエは今でも続けている。「レッスンは週に１、２回ですけど、家でほぼ毎日、自主練して汗を流しています。踊っている時が一番、楽しいです」。バレエで培った体力、リズム感、表現力は女優としても強みになる。今回は主題歌「ＢＩＳＨＵ」も担当。力強い歌声を披露している。成長著しい１８歳。「歌って踊れる女優」として更なる飛躍が期待される。 　〇…今年６月、３年９か月に及ぶロングラン上映の最終日を終えた「ミッドナイト―」の舞台あいさつで、草ナギ剛（５０）と再会した。「久しぶりだったので緊張しましたが、草ナギさんに会った瞬間、一気に和みました。草ナギさんは優しいオーラと優しい声で話しかけてくれて、うれしかった。韓国語でも会話をしました」。草ナギとの出会いを喜び、「『ミッドナイトスワン』でデビューしたことが人生の宝物です」と思いを込めた。 　◆「ＢＩＳＨＵ　世界でいちばん優しい服」　世界３大毛織物（ウール）産地の一つである愛知・一宮市に暮らす神谷史織は、発達障害を持ちながらファッションの夢に挑戦する高校生。ある日、史織が描いた服のデザインを見た親友の真理子（長澤樹）の提案で、ファッションショーに応募することに。父の康孝（吉田栄作）は猛反対するが、史織は夢に向かって一歩ずつ踏み出していく。１２５分。 　◆服部　樹咲（はっとり・みさき）２００６年７月４日、愛知県生まれ。１８歳。４歳からバレエを始め、中学１年で演技未経験ながらオーディションを経て映画「ミッドナイトスワン」（２０年）のヒロインに抜てきされ、女優デビュー。報知映画賞、日本アカデミー賞などの新人賞を受賞。２２年、フジテレビ系ドラマ「競争の番人」にゲスト出演。趣味はダンス。身長１７３センチ。血液型Ａ。