「有機大富豪」「熱力学ワーカーズ」…東大生が開発したアナログなカードゲームが話題
2000セット売るヒット商品に
本格的なゲームの制作を始めたのは、東大に合格してからです。クラスメートだった柳本さんと高校時代の友人の堀江さんとで個人事務所を立ち上げ、ゲームの内容をブラッシュアップしました。授業の間の短い休み時間でも遊べるように、1回5~10分でプレーできます。自分たちでカードやパッケージのデザインも手がけて、2021年にrikeigamesシリーズの第1号「有機大富豪」の発売にこぎつけました。 最初に制作したのはわずか50セット。ほぼ自腹でした。新井さんは「最初に売り始めたときは50セットも売れるのかとすごく不安でした。だれからも評価されないんじゃないかと思ったこともありました。でも、いざ出してみると、『すごく面白いね』と言ってくれる人も多かったです」と話します。その後、東大の生協やネットショップなどにも販路を見つけ、現在までに合計2千セットを売り上げるヒット商品に育てあげました。 続けて、素因数分解を元にしたゲーム「素数スピード」や、高校物理が学べる「熱力学ワーカーズ」も発売しました。ゲームを販売する知識をネットから集め、タスク管理はアプリをカスタマイズしてオンラインで行っています。また、クラウドファンディングで資金調達するなど、今の時代ならではの方法も活用しています。ただし、作っているのはどれもデジタルではなく、紙でできたアナログなゲームです。 柳本さんは「計算や処理などを自動でやってくれるデジタルのゲームは、プレーヤーがどうしても受け身になってしまいがちです。紙のゲームは全部の操作を自分の手でやらなくてはいけないうえ、何をするにも自分の頭で考えなくてはいけません。僕らのゲームが目指すことのひとつである、教育との相性のよさも強く感じています」と言います。 新井さんは「自分が作るものに価値があるんだと感じて、自信がつきました。大学院修了後の進路は未定ですが、このビジネスの経験は何にも代えがたいものになりました」と、「遊び」を売ることで大きな学びを得ました。