星野イズム継承。中日・与田監督がOP戦で見せた勝負采配の理由とは?
――最初からそういうプランで? 「オープン戦も7試合目。色々とやっていこうと。たまたま、そういうシチュエーションになった。福がランナーを出したところでシーズンを見越した戦い方を考えた」 ――オープン戦と言えど勝つ味を植え付けたい? 「こういう展開のゲームでは試していかないとね。(オープン戦だから)負けても収穫はある。でも、こういうゲームを勝つことで自信をつけさせることが僕らの責任」 初めて監督というタクトを執る与田監督は、首脳陣の責任論をぶった。与田監督のテーマはハッキリとしていたのである。 「選手、それぞれが自信をつけてくれればいいこと。四球は緊張感で出ます。こういう展開だと、野手も守りで、そういう時間を過ごす。プレッシャーの時間を自信にして欲しい」 与田監督が師と慕う故・星野仙一監督は、低迷した翌年のオープン戦では、よくこんな勝負采配をやって勝利にこだわっていた。勝つ味を忘れているチームへのメッセージである。この試合までチームは、2勝4敗。今の段階では調整や経験が主眼であるにもかかわらず与田監督は、負けた試合の後のコメントでは必ず悔しさを口にしてきた。23年ぶりに1軍のゲームが行われた7日のナゴヤ球場での横浜DeNA戦で0-5と完敗すると「勝ちを(ファンに)見せたかった」と悔しがった。 チームは2013年から6年間、Bクラスが続く。 結果を求められることのない、たかがオープン戦である。しかし、されどなのである。新指揮官が継承した星野イズム。勝利という勝負ごとの原点にこだわる。言い訳をせず野球に真正面から向かい合う指揮官の姿勢は必ずチームに伝染するだろう。
1点は「去年もあったし、いろんなバリエーションがあったほうがいい」(与田監督)と1番で起用した平田のフェンス直撃の三塁打に続く大島の内野ゴロで還したもの。いわゆる“スミイチ”。追加点が欲しい9回には先頭の亀澤が執念の“ヘッスラ”で出塁した。続く松井にはバントのサイン。だが、ボルシンガ―の見たことのないような落差のあるナックルカーブに2度、バントを空振りした。高校生でも学ぶが、ボールを上からバットで追うと当たらない。バントは変化球の軌道にバットを動かさず待つのが基本だが、松井はそれができていなかった。ヒッティングに切り替えたが、見逃しの三振に倒れた。 「できることをしっかりをやっていくことが必要。勝ったがうまくいかないこともあった。勝って反省していきたい」 与田監督は、そう言った。 こういう基本的なミスをできる限り、今、出しておこうとオープン戦を含めた対外試合をたくさん組んだ。ゲームでのミスこそが“最高のコーチ”である。シーズン中なら罰金ものだろうが、こういうケースでバントの多い松井に基本を見直させただけで収穫だろう。 最後に。この日、中日をカバーしているメディアの数は少なかった。遠く鳴尾浜で行われた教育リーグで阪神のメッセンジャーを相手にドラフト1位の根尾が「6番・DH」で実戦デビューしたためだ。しかし、勝負に入りこんでいた与田監督は結果を知らなかった。 「どうだったんですか?」 試合後の囲み会見で逆に質問。簡単に内容を伝え聞くと「メッセンジャーでしょ?そうかあ。映像を見ておきます。見ていないので何にもないです。まず試合に出て、球界のトップクラスと対戦できるのはいいこと。そこで自分の能力を知ったり、いろんな発見がある。どんどん試合をこなしていって欲しい」と答えた。 現段階で与田監督の構想に根尾の開幕1軍はない。あの巨人の松井秀喜氏でさえ、高卒1年目は、キャンプ、オープン戦を怪我なくきていたが、開幕前に一度、プロの壁にぶちあたり、開幕は2軍スタート。そこから再構築して1軍デビューは5月だった。まして根尾は故障でスタートが出遅れている。ただ両外人がまだ調整途中の打線に元気がないだけに、今後、驚異的な結果を出し続けて与田監督を悩ませれば話は違ってくるだろう。投手力も含めた戦力は優勝を狙うには厳しいだろうが、“勝負師・与田”の開幕が楽しみになってきた。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)