日本代表が抱えるジレンマ…。三笘薫や久保建英の活躍に複雑な思い「幸運を祈ると言ったら嘘になる」【英国人の視点】
三笘薫や久保建英といった欧州リーグでプレーするサッカー日本代表選手たちは、シーズン中のクラブを離脱してAFCアジアカップカタール2023に臨む。代表選手が所属クラブで活躍すればするほど、クラブと国の両方を背負う難しさが健在する。日本代表はこのジレンマにどう向き合っていくのだろうか。(文:ショーン・キャロル) 【グループリーグ順位表】AFCアジアカップカタール2023(アジア杯) <組み合わせ>
●対照的だった2つのキャリア 1991年にわずか17歳にしてマンチェスター・ユナイテッドでデビューしたライアン・ギグスは、誰もが認めるクラブのレジェンドである。オールド・トラフォードで963試合に出場し、23年間のキャリアに幕を閉じた。 世界有数のビッグチームで驚異的な長寿を誇ったにもかかわらず、ギグスは母国ではあまり活躍できていない。2007年に代表引退するまで、ウェールズ代表としてプレーしたのはわずか64試合だった。 彼の親善試合初出場は、デビューから丸9年後、ホームでフィンランドに2-1で敗れた試合だった。その間、不名誉にも彼は18試合連続でメンバーに選ばれていない。2018年にウェールズ代表監督に就任した際にも、そのことについて尋ねられたほどのことだった。 機知に富んだ日本代表の左ウインガーに、これほど極端な事態が起こらないことを祈るばかりだが、三笘薫がここ最近、代表活動から離れていることは、森保一監督とその後を継ぐ者たちが今後数カ月、数年に渡って直面することになるであろう問題を暗示している。 ●「本当に驚いている」三笘薫をめぐる問題 三笘はアウェイで行われた9月9日のドイツ代表戦以来、日本代表でプレーしていない。10月のカナダ代表、チュニジア代表との親善試合、11月のミャンマー代表、シリア代表とのFIFAワールドカップ26アジア2次予選を欠場し、(国際Aマッチデーではない)国立競技場での元日のタイ代表戦のメンバーにも選ばれていない。 これらの欠場は表向きにはフィットネスの問題によるものとされている。ただ、12月21日のクリスタル・パレス戦で負傷するまで、ブライトンではシーズンを通して1試合しか欠場していない。10月に日本代表を離脱する前の4試合と離脱後の5試合を含めて、今シーズンはこれまで24試合中20試合で先発出場している。10月の日本代表から外れた際にクラブを率いるロベルト・デ・ゼルビ監督が発したコメントにはほんの少しの不誠実さを感じる。 「メディカルスタッフには負傷から復帰するのに4~6週間かかると言われたので、本当に驚いている」。アジアカップのメンバーが発表された後、米メディア『ユーロスポーツ』はブライトンのイタリア人監督のコメントを伝えた。「私としては、彼がアジアカップでプレーできると考えるのは難しい」。 リバプールのユルゲン・クロップ監督も、遠藤航がカタールに向かうというニュースに対して、同じように控えめな反応を示している。日本代表のキャプテンとエジプト代表のチームメイトであるモハメド・サラーが、それぞれアジアカップとアフリカ・ネーションズカップから速やかに退くことを願うとコメントした。 「幸運を祈ると言ったら嘘になる」と前置きしつつ、「個人的な観点から言えば、彼らがグループリーグで敗退しても、私はそれほど不満には思わないが、おそらくそれは不可能だろう」とクロップは語っている。 ●「悪いと思っている…」久保建英がアジアカップにかける思い どちらのケースでも、監督たちは選手たちの健闘を祈るような言葉で締めくくったが、彼らの本心はすでに明らかになっている。日本代表選手にとってクラブ対国の問題が頭をもたげるのはこれが最後ではないだろう。 例えば、田中碧がまさかの落選をしたのも、この問題が1つの要因になっているようだ。この大会に参加することが、フォルトゥナ・デュッセルドルフからドイツ1部リーグへの移籍を希望している25歳の障壁になるのでは、という指摘がある。 久保建英はまた、ドーハで日本代表のチームメイトと合流する前に、レアル・ソシエダでの最後の試合を終え、シーズン途中でチームを離れることの難しさについても触れた。 「結局のところ、アジアカップがリーガ・エスパニョーラの期間中に開催されるのは難しい」と久保はDAZNに語ったと『Football Espana』は報じている。「ラ・レアル(ソシエダ)は僕にお金を払ってくれる。一方で、こういった大会には参加する義務があるので、私は行かなければならない。ラ・レアルには悪いと思っているが、国を代表してアジアカップに出場することは、とても素晴らしいことでもあるんだ」。 過去30年間、日本代表は日本人選手にとって最高峰の舞台であり、それは個人レベルでは今後も変わることはないだろう。しかし、サムライブルーのスター選手たちが欧州サッカー界で着実にステップアップしていくにつれ、所属クラブは国際試合のために彼らを送り出すことにますます消極的になっていくだろう。ギグスのジレンマがよくある問題になるのを避けるためにも、JFA(日本サッカー協会)は毅然とした姿勢を保つ必要がある。 (文:ショーン・キャロル)
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