俳優デビュー5周年の島村龍乃介が語る仕事の面白さと主演作、舞台『弱虫ペダル』への思い
人気漫画原作の舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2が、3月1日(金)より東京 天王洲 銀河劇場でスタートする。約半年前に上演された前作を振り返ってもらいながら、小野田坂道を演じる主演の島村龍乃介に自身の変化やカンパニーとしての成長について語ってもらった。また、2024年に俳優デビュー5周年を迎えるにあたっての思いについても聞いた。 【写真】俳優デビュー5周年を迎える島村龍乃介 ■大人っぽくなってきたと言われる今が「踏ん張りどきですね(笑)」 ――撮影中にスタッフ陣から「顔が大人っぽくなってきた」という声がかかっていました。ご自身で変化や成長は感じますか? 毎日自分の顔を見ているので変化は正直わからないんですが、写真を見返してみると「そうなのかな」と思うことはありますね。それこそ今回(舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2)のビジュアル撮影のときに、みんなに小野田っぽさがなくなってきたと言われて。いい意味で大人になってきているということなんですけど、とはいえ小野田にならないといけないから……踏ん張りどきですね(笑)。 ――ではまず、2023年8月に行われた舞台『弱虫ペダル』THE DAY 1を振り返っていただきたいと思います。「THE DAY 1」を終えての率直な感想を教えてください。 達成感がすごかったです。「THE DAY 1」と比べると、前作の「The Cadence!」(舞台『弱虫ペダル』The Cadence! / 2022年7月上演)のほうが走る量自体は多かったと思うんですが、精神面では「THE DAY 1」のほうがキツかった。というのも、「The Cadence!」はみんなで走っていたんですが、「THE DAY 1」では100人抜きのシーンなどひとりで走らないといけない場面で、精神的なしんどさ、寂しさがあって。それを乗り越えるのが毎回大変でした。だから全公演乗り越えて、本当によくやりきったなというのが率直な感想ですね。 ――もちろんお芝居の中ではひとりで走っているといっても、実際はみんなで作る舞台だと思います。それでもやはり寂しさを感じるものなのでしょうか? そうですね。役に入っているからなのか、100人抜きのときはすごく孤独を感じましたね。 ――前回のインタビューでは、「THE DAY 2」に向けての課題として、舞台の声量で気持ちを乗せる難しさを挙げていましたが、そこは乗り越えられましたか? どうですかね。でも乗り越えられたんじゃないかな。演出の鯨井(康介)さんともいろいろ話をしたんですよ。稽古の最初のほうはやっぱり声が全然出なくて。でも後半は徐々に出るようになって、本番ではちゃんと出ていたんじゃないかなと思います。 ――稽古の最初、声があまり出なかったというのは、やはり当初危惧していたように感情の表現と声量の両立が難しかったから? それもありますし……今まで演じてきた役の中で小野田が一番難しいんですよね。僕と一番離れているキャラクターなので。僕は小野田ほどアニメ好きというわけではないし、こんなにまっすぐじゃない。正直、共感できない部分もすごくありました。でも“やると決めたことはやりきる”というところは共感できる。そこから小野田を理解して演じていった感じです。でも「The Cadence!」のときはできても、また少し期間が空くとできなくなっちゃうんですよ。だからまた「THE DAY 2」も不安な部分はあります。「小野田ってどんな感じだったかな?」って。でも楽しみでもあります。 ――“やると決めたことはやりきる”ところが似ているとのことですが、島村さんがこれまで「これはやりきったなー」と思うエピソードがあれば教えてください。 昔から負けず嫌いで。例えば小学校の頃に、「このテストで絶対に○点以上取る。だから勉強する」と決めて、本当にその点数を取ったりしました。あとは、本当にしょうもないことですけど、「ガリガリ君のあたりを出すまでもう他のアイスは食べない!」って宣言して、あたりが出るまで1カ月くらいガリガリ君を食べ続けたこともあります(笑)。本当しょうもないですよね。 ――いやいや。それこそ途中でやめてもよさそうなものを、ちゃんと最後までやりきるのはすごいです。 なんだか、途中から楽しんでいる自分がいました(笑)。 ■3作目を迎えて、より増しているチーム感 ――話題を舞台『弱虫ペダル』に戻します。島村さんが小野田を演じる座組は今作で3作目。これまでの2作を作り上げていくなかで、カンパニーの雰囲気や関係性に変化はありますか? ものすごく変化しました。「The Cadence!」のときは、わちゃわちゃしている感じだったんです。でも「THE DAY 1」では、総北高校とハコガク(箱根学園)それぞれにチーム感がすごく出て。僕たちは毎公演、毎公演「ハコガクには負けねえ」って言っていましたし、本当に総北とハコガクはいいライバルでもあり、いいカンパニーでもあり。すごくいい雰囲気でできたなと思います。 ――チーム感が増したきっかけは何かあったのでしょうか? ある日の稽古で「ハコガクのほうがよかった」って(脚本・レース演出メソッド創作/監修の)西田シャトナーさんに言われたんです。そこから「次は絶対に『総北がいい』って思わせられるように頑張ろう」と燃えて、チームで話し合うようになりました。それまでは個人個人でやっていたところがあったんですが、そこから「ちゃんと集まろう。話し合おう」となって。それこそ鯨井さんも、もともと総北メンバーなので(※鯨井氏は以前、舞台『弱虫ペダル』に手嶋純太役として出演していた)。だから「鯨井さんのためにも頑張ろう」っていう気持ちにもなって。そこからですね。毎回本番では「絶対俺らが勝つ」という意志で演じていました。 ――すごくすてきな話ですね。 「絶対俺らが勝つ」っていうのはハコガクメンバーには言っていないんですけど。それもまたリアルですよね。 ――そんなチーム感の強まったカンパニーで、舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2が始まります。現時点での意気込みを聞かせてください。 「THE DAY 1」もすごくいい作品だったので、「THE DAY 2」はもっともっといい作品にできたらと思っています。「THE DAY 1」のときはスプリントレースが最初の見せ場だったんですが、今回はおそらく小野田と田所さん(滝川広大演じる田所迅)のシーンが最初の見せ場になる。最初から加速していかないと、そのあと走っていけないと思うので、今はそこがプレッシャーですね。でもそれも楽しんで、背中でみんなを引っ張っていけたらいいなと思っています。 ――楽しみなことはありますか? 小野田と田所さんが歌うところですかね。(小野田は)いつもひとりで「恋のヒメヒメ☆ぺったんこ」を歌っていたんで、まさか一緒に歌ってくれる人がいるなんて! いつも舞台上では堂々としていますけど、正直「恋のヒメヒメ☆ぺったんこ」をひとりで歌うのはちょっと気恥ずかしい気持ちもあるんです。でも、一緒に歌ってくれる人がいたら、そりゃあ歌いますよ! その「一緒に歌ってくれる人がいる」といううれしさこそ、小野田の気持ちなんだろうなとも思います。 ■「性格の違う役を演じられること」が俳優業の魅力 ――島村さんは2019年に俳優デビューなので、2024年で俳優デビュー5周年を迎えます。 えー、考えたこともなかった。本当ですね。早い! ――せっかくの機会なので、俳優というお仕事やお芝居についての現在の考えもお伺いしたいと思っています。これまでの俳優人生で誰かに言われて印象的だった言葉や誰かの姿勢など、今のご自身に特に影響を与えたものはありますか? それこそ鯨井康介さんの言葉ですね。初めてお会いしたのが舞台『弱虫ペダル』のライドワークショップで。僕は舞台が初めてだったので、舞台とはどういうものかという説明も含めてお話しさせてもらったんですが、そのとき僕、めちゃめちゃ緊張していたんですよ。そしたら「緊張しないほうがいいよ」と言ってくださって。「舞台は呼吸だから」って。最初は「呼吸!?」となって「……はい……」って返したんですけど(笑)、緊張すると呼吸が浅くなってしっかり呼吸できていないと言われて。確かにそうかもなと思いました。とりあえず深呼吸して落ち着いてやったほうが芝居もうまくいくし、見ている側も見やすいからと。そこから呼吸をすごく意識するようになりましたね。今でも緊張しそうになったときは意識して深呼吸するようにしています。 ――現在の島村さんが感じるお芝居や俳優というお仕事の面白さはどのようなものですか? 小野田もそうなんですが、僕と全然性格の違う役を演じられること。それによって「こういう考え方もあるんだ!」といった発見も多いんですよ。それこそ秋葉原にガチャガチャがいっぱいあるとか、そういうことも知らなかったですし、オタクって深いんだな~って。知らなかった世界を知ることができるのが面白いですね。 ――やはり、小野田坂道役というのは島村さんにとって大きなものですか? 大きいですね。最初は本当に演じられるのかな?とも思いましたし。今でも小野田がどういう人かわかりきっていないので、今回の「THE DAY 2」で、もっと知れたらいいなと思います。 ――では最後に、俳優としての今後の目標を教えてください。 たくさんの人に知ってもらえる俳優になりたい。そのうえで「この俳優さん、すごいな」と思ってもらえるような俳優さんになるというのが目標です。そのためにはいろいろな役に挑戦していきたいですね。チャラい役やいじめられっ子は経験があるのですが、狂った役や殺人鬼などを演じたことがないので、そういうものにも挑戦してみたい。今は幅を広げていく時期かなと思っています。 ◆取材・文=小林千絵 撮影=八木英里奈 ヘア&メーク=Aki