映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 ―「ディア・ファミリー」
映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 ―「ディア・ファミリー」
世界で17万人の命を救った、バルーンカテーテルによるIABP(大動脈内バルーンパンピング)。その誕生の裏には、大切な娘を何が何でも救いたいと奔走したある家族の物語があった――。そんな知られざる実話を、「君の膵臓をたべたい」の月川翔監督が映画化。国民的俳優として活躍する大泉洋が〝絶対にあきらめない〞父・坪井宣政を、型破りな夫を支える妻・陽子を菅野美穂が演じる。また、坪井家の仲良し三姉妹を川栄李奈、福本莉子、新井美羽が好演。脚本は「永遠の0」の林民夫が務めた。 ある日、一家は、次女・佳美の「余命10年」を宣告される。ただ死を待つだけの10年か、不可能に挑む10年か。医療の知識はまったくない宣政だったが、佳美が懸命に頑張る姿に胸を打たれ、「自分でやれることは、自分でやる」と一念発起。こうして、しがない町工場を営む男の、人工心臓開発という無謀な挑戦が始まる。膨大な資料で人工心臓についてイチから学び、有識者に頭を下げ、開発を重ねるたびに消えていく資金。そして、一家は最大の試練に直面する……。
人工心臓、そしてバルーンカテーテルの開発には、想像を遙かに超える壁が次々と立ちふさがる。普通なら「もうダメだ」とあきらめてしまうところだが、宣政は違う。彼を知り尽くした家族からの「それで、次はどうする?」という温かい言葉に押された宣政は、決して歩みを止めないのだ。自身も一 児の父である大泉洋が見せる娘に対する優しい眼差し、家族のために頑張る背中は、今の彼だからこそ演じられた当たり役と言える。我が子の笑顔を守ること以上のことが親にあるのだろうか、と感じずにはいられない本作。家族の希望の物語としてはもちろん、今、日本が抱えている医療の課題についても考えるきっかけとして、ぜひご覧いただきたい。 文=原真利子 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2024年6月号より転載)
「ディア・ファミリー」 【あらすじ】 生まれつき心臓疾患を患っていた娘・佳美(福本)は、医師から余命10年と宣告をされる。絶望する家族だったが、小さな町工場を経営する父・宣政(大泉)は「じゃあ俺が人工心臓を作ってやる」と立ち上がる。突然の宣言に困惑するも、次第に宣政の夢を応援することを決意した妻の陽子(菅野)ら家族は、無謀とも言える挑戦に共に立ち向かっていくが……。 【STAFF & CAST】 監督:月川翔 出演:大泉洋、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、有村架純、松村北斗、光石研 ほか 配給:東宝 日本/2024年/116分/G 6月14日(金)より全国にて公開
制作=キネマ旬報社