忍び寄るJ2降格の影、ゴール裏から「前向きな言葉」も…エースの落胆に映った現実【コラム】
アウェーで敗戦、柏のサッカーは悲観するものではなかったが…
それでも、柏がアウェーのピッチで見せたサッカーは、内容的に悲観するものではなかったと思う。 左サイドバック(SB)のジエゴは美しくない荒っぽさが消え、攻撃面での貢献も高くなっているように感じた。ブラジルのSBらしく果敢に攻め上がり、チームの攻撃の起点となるマテウス・サヴィオを後方からサポートし、左サイドからの攻めを活発化させていた。 そのM・サヴィオは巧みなテクニックを駆使して浦和の守備を掻い潜り、鋭い弾道のパスをゴール前に供給して攻撃を牽引。柏のエースナンバー10を背負う選手として存在感を示した。 さらに途中出場のフロートも、これまではどこかプレーに軽さがあったが、ようやく逞しい体格に合致した、地に足のついたパワフルなプレーを発揮できるようになっている。 チームを安定させる守備面でも浦和の攻撃の選手に素早く、そして激しく詰め寄り自由にプレーをさせなかった。試合終了間際の失点により、敗戦という結果を突きつけられたものの、浦和に試合の流れで崩される場面を作らせなかったことは評価できる。 サポーターたちも結果はともかく、試合内容には満足はしていないかもしれないが、悲観もしていないようだった。選手たちの奮闘を称え、挨拶をするためにスタンドに足を運んだ彼らに向けて前向きな言葉をかけていたことからも、サポーターたちの思いが察せられた。 しかし、アディショナルタイムの失点による敗戦は現実だ。カメラのレンズを向けた細谷真大の表情には落胆が滲み、自分がゴールを決めていればという思いが胸に刺さっているように見えた。 それでも、繰り返すがこの試合で見せた柏のサッカーは、決して内容的には悪くはなかった。サポーターたちもそれを分かっている。その事実を自信として胸に秘め、これまで以上に勝負に対して強いこだわりを持って、チームが直面している試練に立ち向かい、乗り切るしかない。 [著者プロフィール] 徳原隆元(とくはら・たかもと)/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。80年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。
徳原隆元 / Takamoto Tokuhara