<いざ令和の春>センバツ鳥取城北 軌跡/上 このままじゃあかん /鳥取
「こんなに喜ばしくない優勝は初めてだ」。秋季県高校野球大会決勝の2019年9月29日。境を2桁得点で降し2年連続10回目の優勝を果たした鳥取城北の試合後のミーティングで、山木博之監督(44)は強い口調で部員をとがめた。学校へ戻る途中のバス車内でも気まずいムードがただよったままだった。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 夏の甲子園の切符を懸けた同年7月の鳥取大会は、決勝でライバル米子東に逆転負けを喫した。当時ベンチから先輩の無念さを目の当たりにした河西威飛(いぶき)外野手(2年)は「自分たちは絶対に出よう」と心に固く誓った。 が、新チーム発足後、部員間に小さな亀裂が生じつつあった。守備練習で連係プレーがかみ合わない。声も出ていないし、簡単なボール回しでさえできていなかった。そんな状況下、お互いに声を荒らげる場面も多々あった。山根琉滉(りお)内野手(2年)は、練習試合で失策をし「プレーが軽い」と他の部員から注意を受けた。「グサっとくることもあったけど、素直に受け止めようと思った」と振り返った。 秋の県大会は、鳥取中央育英との初戦はコールド発進。続く強豪・鳥取商との準々決勝は二回までに6点と大量得点を奪ったが、勝ちに急いだか終盤守備にささいなミスが出始め、1点差まで追い上げを許した。準決勝も倉吉東に3度1点差に詰め寄られた。 そして決勝。11点リードで迎えた九回裏、守備の乱れから反撃を許し、相手打者は一巡。4点を献上した。主将の吉田貫汰(かんた)内野手(2年)は「甘さや油断が出てしまった」と認める。ミーティングで山木監督はこう付け加えた。「野球の神様がこのままじゃあかん、と教えてくれたんだ」 ⚾ 阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で3月19日に開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)に8年ぶり2度目の出場を決めた鳥取城北ナイン。新チーム発足後の軌跡を追った。=次回は29日掲載