【競馬】2023年「逃げ限定」リーディングは坂井瑠星騎手 「逃げない騎手」などデータで浮き彫りに
「逃げ」に積極的⇔消極的な5名
ここで素朴な疑問が浮かぶ。「逃げ切りが多い騎手」は分かったが、勝ち負け問わず「よく逃げる騎手」は誰なのか。あるいは「めったに逃げない騎手」も、馬券検討のために把握しておきたいものだ。この点について追加調査する。 なお、調べてみるとリーディング下位の騎手には「逃げられる馬にほぼ乗っていない」というケースがしばしば見られた。そのため、ここからはリーディング50位以内の騎手を対象とする。 騎乗数に占める「逃げ」の割合が高かった上位5名は、坂井瑠星騎手(13.4%)、武豊騎手(12.7%)、古川奈穂騎手(12.4%)、三浦皇成騎手(11.9%)、池添謙一騎手(11.5%)。最多勝の坂井騎手は、「逃げ」を選択する割合そのものもトップだった。 3位に古川奈騎手が入っていることも注目に値する。坂井騎手と同じ矢作芳人厩舎の所属だからだ。矢作厩舎といえばパンサラッサやバスラットレオン、ユニコーンライオンらを手掛ける「逃げ馬の名門」という顔も持つ。所属騎手にも逃げ戦法の有用性を説き、積極性を求めているのかもしれない。 反対に「逃げ割合」下位の5名は、内田博幸騎手(4.8%)、川田将雅騎手(4.6%)、大野拓弥騎手(4.1%)、戸崎圭太騎手(4.0%)、北村宏司騎手(3.9%)という顔ぶれだった。関東の中堅~ベテラン騎手4名がここに偏った。 ひと口に「逃げない騎手」といっても、川田騎手の場合は逃げた時の勝率が47.8%。自身の勝率30.5%と比べてもハッキリ高い。めったに逃げないが、「逃げ」が苦手なわけではない。 一方、こちらもリーディング上位の戸崎騎手は逃げた際の勝率が16.1%で、自身の勝率14.4%からほとんど上がらない。冒頭に述べた通り、統計上「逃げ」の勝率はそれ以外の脚質より大幅に上がるのが普通。したがって戸崎騎手は「逃げ」があまり得意ではなく、それゆえ逃げ戦法をほぼとらないのでは、と考察できる。 「逃げ」に積極的かつ得意な坂井騎手や武騎手、積極的ではないが得意な川田騎手、苦手だがそれを踏まえてか選択しない戸崎騎手。トップジョッキーの中でも「逃げ」に対するスタンスには興味深い温度差が見られた。 <ライタープロフィール> 鈴木ユウヤ 東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
鈴木ユウヤ