〈健康診断〉苦手な人も多い「バリウム検査」でわかることとは?医師が解説
■バリウム検査とは? 一般的に、胃の検診といえば「バリウム検査」を思い浮かべる人も少なからずいらっしゃるかと思います。 実際のところ、企業における定期的な検診や自治体レベルでの健康診断などでもバリウムを使用して胃癌などを始めとする胃の病変の有無を検査するために上部消化管X線造影検査が現在でも広く実施されています。 この胃バリウム検査では、バリウムという造影剤、胃を膨張させる作用を有する発泡剤を服用した状態で、X線を照射して主に胃の内部を観察できる検査方法です。 的確な検査結果を得るために、バリウム検査を受診する前日の食事内容としては油っぽい食事や甘い菓子などは消化するのに時間を要するため出来る限り避けるようにして、夜の21時までには晩御飯を済ませるように注意しましょう。 バリウム検査を受けた後は消化管内に長期に渡りバリウムが残存していると、便が硬くなるのみならず腸閉塞や消化管穿孔などを始めとする合併症を招く危険性があるため、水分をいつもより多めに飲み下剤を服用してバリウム造影剤を迅速に排出するようにします。 胃バリウム検査はバリウム造影剤と発泡剤を服用した後すぐに撮影検査を実施するため、検査にかかる時間は概ね10分程度と短めで済みますし、スキルス性胃がんを含む胃の悪性腫瘍や食道がんの発見に有用です。 造影剤が流れるにしたがってリアルタイムに食道や胃の蠕動運動、食べ物が通る様子や粘膜表面の造影剤の溜まりなどをモノクロで観察することで食道や胃の全体像を把握しやすく、癌病変以外にも胃潰瘍や胃炎、ポリープなども発見しやすいという利点が挙げられます。 胃がん検診においては、胃や食道、あるいは十二指腸などを広くチェックして、胃がんを始めとして胃潰瘍、食道癌、逆流性食道炎、十二指腸潰瘍などに関する発症リスクを調べるために、「胃カメラ」と「胃バリウム検査」が代表的に有用な検査として知られています。 両者には検査方法や特徴に違いがあり、例えばバリウム検査では検診前後に注意すべき制限がある、もしくは発泡剤やバリウム造影剤を服用するなどの身体的な負担もあることから苦手意識を持つ人も多いかも知れません。 バリウム検査には一定の安全基準が設けられており、検査機器の都合で体重120kgを超過している方やもともと便秘症の場合には通常、検査対象外とされています。 バリウム検査の短所は、胃液の多い人がバリウムを飲むと、胃液がバリウムの胃粘膜への付着を邪魔して、凸凹の病変を検出しづらくなり、検査精度にむらがでる点です。 胃の病変のなかには、平べったいがんもありますので、このような形の検出も苦手としています。 バリウム検査は、狭いレントゲン台の上でゴロゴロと寝返りする必要がありますので、高齢の方は腰や背中などに痛みを伴う場合もあります。 また、被爆の問題もあって、被爆量自体ははたいしたことはありませんが、被爆があるよりないにこしたことはありません。 慢性的に便秘の場合には、検査後のバリウム排泄に時間がかかり、腹痛や下血などを起こすことがあります。 〈写真〉胃のポリープはなぜできる?胃がんに進行する?胃ポリープができやすい人の特徴とは ■バリウム検査でわかる病気とは? バリウム検査とは、バリウムという造影剤を服用して発泡剤である炭酸成分によって胃全体を膨らませて、X線(レントゲン)を連続して照射しながら撮影する検査方法です。 バリウム検査の主な目的は食道や胃、十二指腸などにおける疾患を早期発見することです。 この検査は食道や胃、十二指腸など上部消化管における病変の有無をチェックすることが出来る検査手段であり、正式には「上部消化管X線検査」と呼称しています。 バリウム成分が消化管粘膜の表面をスライドして滑り落ちて粘膜壁に付着していく様子を撮影すると、ポリープや隆起物、あるいは潰瘍性病変や陥凹所見などの有無を評価することが可能となります。 特に、胃の潰瘍病変においては粘膜組織が深く欠損していることが多く、胃などの壁に潰瘍があるとそこにバリウムが入り込んで、ニッシェと呼ばれる特徴的な画像所見が得られます。 また、胃壁の粘膜ひだが集中している所見が認められる場合には、胃潰瘍が治癒した痕跡や時に悪性腫瘍に伴うものである可能性が疑われます。 それ以外にも、バリウム検査を実施することで急性胃炎や慢性胃炎が疑われて胃の内部がピロリ菌に感染していることが想定される場合には、胃潰瘍や胃がんなどに罹患する確率が上昇しますので、ピロリ菌検査や除菌療法などを実施することが推奨されています。 実際の検査においては、最初にバリウムをすべて服用してから検査者の指示に従って検査台の上で自分の体の向きを四方八方に変えて撮影する場合や、検査台を動かすたびに少しずつバリウムを口に含ませて服用して撮影を進めていく場合などが想定されます。 健康診断など最初の段階ですべてバリウムを服用する際には、撮影時間はおよそ5分程度であり、人間ドックなどにおいて少しずつ体位を変えながらバリウムを服用するケースでは撮影時間は概ね10分程度かかると考えられます。 ■まとめ 胃バリウム検査とは、発泡剤の炭酸成分で胃全体を膨らませて、バリウムの造影剤を飲んでX線を照射しながら消化管を撮影する検査方法です。 この検査は、胃や食道、十二指腸などにおけるがん病変以外にも、胃潰瘍や胃炎、ポリープなどの異常所見を早期的に発見することを主な目的として実施します。 バリウム検査を実施した後には、便秘にならないように普段より多めに水をコップ2杯程度飲み、そのあと30分ぐらい時間を置いてから緩下剤を服用して白色便を排出して通常の茶色便に戻ることを確実に確認しましょう。 バリウム検査後はバリウムを完全に体外へ排出する必要があり、大量の水や下剤を飲んで一定時間経過しても便が出ない場合、あるいは強い腹部症状が出現する際には十分に注意して早急に医療機関を受診することを心がけましょう。 今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟