『ブギウギ』“小夜”富田望生にまさかのプロポーズ! 趣里の“喜劇的な才能”光る一幕に
『ブギウギ』(NHK総合)第74話では、スズ子(趣里)はタナケン(生瀬勝久)から相変わらずアドバイスをもらえないまま、稽古を続けていた。タナケンの煮え切らない態度や劇団員の田中(西村直人)からの言いがかりや嫌味もあって、スズ子の気持ちは折れかけている。そんな時、山下(近藤芳正)がスズ子にこう訴えかける。 【写真】喜劇『舞台よ!踊れ!』の稽古をするスズ子とタナケン 「福来スズ子より達者に歌う歌手は他にもおる。それでもみんな、こぞって福来さんの歌を聞きにきましたやろ。それは、あんた自身が面白いからや」 「わしは、福来スズ子の歌しか知らん人に、もっとあなたの魅力を知ってもらいたい」 スズ子自身が面白い。このことがおそらくタナケンとの舞台に生きてくるはずだ。そのことを示すかのように、第74話で描かれた小夜(富田望生)との一件は、人情味があふれる喜劇のように描かれた。 小夜は泣きながらスズ子を訪ねてきた。小夜はしゃくりあげながらスズ子に事情を説明する。幼い子どものように泣きじゃくる小夜の姿には強い悲しみが感じられるが、それと同時に、言葉が途切れ途切れになってしまうほど激しい泣き姿にはおかしみもある。小夜の訴えを聞いたスズ子はややドスのきいた声で「どこにおる?」と聞く。そしてサム(ジャック・ケネディ)の居場所が分かるや否や、「あんのアメリカァ! 絶対に許さへん!」と息巻き、一目散にかけていった。スズ子の言葉の途中で見せた愛助(水上恒司)の「ん?」という表情やスズ子の怒りがあらわになるまでの間など、喜劇的な面白さがちりばめられている。 スズ子は「おらあ、アメリカァ!」と怒りを爆発させながらサムに掴みかかった。小夜と愛助がその間に入ると、サムは小夜に向かい、たどたどしい日本語で「私と結婚してください」と伝えた。「結婚」という思いも寄らぬ一言に状況が掴めず、眉を上げるスズ子と、驚きのあまり「結婚!?」と声が裏返ってしまう小夜。あんぐりと口を開けたまま動けなくなってしまった小夜を、スズ子は引きずるようにして連れて行く。スズ子はまだ気づいていないが、スズ子は今まさに、タナケンの舞台のようなドタバタ劇の中にいる。 山下が訴えかけたスズ子の魅力は、コメディエンヌのような面白さだけではない。愛助を通じて、サムが小夜を連れて帰るスズ子を見てなぜ笑っていたのかが伝えられる。 「家族に捨てられたって聞いてたのにスズ子さんが現れたから、なんやホッとした言うてたわ。家族がおったんやったらよかったて」 長年付き人として自分の近くにいた小夜を、スズ子は家族のように大切に思っている。小夜を心配するスズ子の思いも、スズ子自身の面白さを形作るものだ。 小夜とサムの関係が今後どうなるのかも気になるが、タナケンとの舞台にスズ子自身の魅力がハマるその瞬間にも期待が高まる。
片山香帆