残暑もこれで乗り越えられる?『デイ・アフター・トゥモロー』『フローズン』など、過酷すぎる極寒サバイバル映画まとめ
8月ももう終わり9月に入った。だいぶ涼しくなったとはいえ、日中はまだまだ暑い日が続いているが、そんな日は涼しい空間での映画鑑賞がオススメ。しかも氷河期や北極、雪山を題材にした寒い映画なら相乗効果的にさらに涼しい気分になるかも?ということで、いまこそ観たい“極寒サバイバル映画”を紹介していく。 【写真を見る】復讐を果たすため、決死のサバイバルに臨むグラスをディカプリオが体を張って体現(『レヴェナント:蘇えりし者』) ■地球温暖化によって氷河期がもたらされる/『デイ・アフター・トゥモロー』 『デイ・アフター・トゥモロー』(04)は、『インデペンデンス・デイ』(96)のローランド・エメリッヒが手掛けた壮大なスケールのディザスタームービー。地球温暖化が進んだ結果、北極圏の氷が解けて海中の塩分濃度が変化し、海流が急変したことで世界規模での異常気象が発生。突如として氷河期が到来してしまう。気象学のエキスパート、ジャック・ホール(デニス・クエイド)はニューヨークにいる息子のサム(ジェイク・ギレンホール)が公共図書館で孤立していることを知り、あらゆる物体を瞬時に氷結させる“スーパー・フリーズ”が迫るなか救出に向かう。 冒頭からインドで雪、東京にはハンドボールサイズの雹が降るといった異常気象が起きており、地球がただならぬ状況であることが示唆される。やがてロサンゼルスを複数の巨大竜巻が襲い、スコットランドでは飛行中のヘリコプターがあまりの寒さによってオイルが凍結して落下し、乗員が外に出た瞬間に凍りつくという衝撃シーンも映しだされる。主人公ジャックが目指すニューヨークは、巨大な高潮であらゆるものが流されたのち、氷河期の到来によって一面真っ白な氷の世界に。自由の女神も雪に埋もれ、氷柱まみれになっていた。本作が公開された当時も地球温暖化に対する警鐘は鳴らされていたが、まだどこか劇中の出来事は絵空事のように思えた。しかし、様々な異常気象が報告されているいま改めて観返してみると、必ずしも荒唐無稽なストーリーだと一笑に付せない真実味を感じさせる作品になっている。 ■マッツ・ミケルセン主演のサバイバル劇/『残された者-北の極地-』 “北欧の至宝”ことマッツ・ミケルセン主演の『残された者-北の極地-』(18)。ミケルセン演じるパイロットのオボァガードは、飛行機事故によって機体を北極圏に不時着させ、たった一人で救助を待つ日々を強いられている。そんな彼のもとに、ようやく一機のヘリコプターが現れるが、強風に煽られて墜落してしまう。機内にいた女性パイロットを助けだすが、彼女の容態は危険な状態にあった。覚悟を決めたオボァガードは安全な場所を捨て、遠く離れた観測基地へ徒歩で向かう決意をする。 登場人物はオボァガードと女性パイロットのみで、ほぼ全編にわたってミケルセンの演技が堪能できる。壊れた飛行機を拠点に、魚を釣ったり、救難信号を送ったり、わびしい食事を取って体を休めるといったルーティンをこなし続ける主人公の苦悩や葛藤を全身全霊で体現。撮影はアイスランドで19日間かけて行われたそうで、ミケルセンにとって最も過酷な撮影の一つだったという。それだけに、ソリに女性を乗せて、ひたすら歩き続ける姿にも真に迫るリアリティを纏わせている。 ■レオナルド・ディカプリオが体現する壮絶な復讐劇/『レヴェナント:蘇えりし者』 レオナルド・ディカプリオが悲願のアカデミー賞主演男優賞に輝いた『レヴェナント:蘇えりし者』(15)。舞台は西部開拓時代のアメリカ北西部の極寒地帯。毛皮猟の一団のガイドをしていたヒュー・グラス(ディカプリオ)は、一人で森を散策しているところをクマに襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。さらに、仲間に置いていかれたうえ、ハンターの一人、ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)が息子のホーク(フォレスト・グッドラック)を殺害。奇跡的に一命を取り留めたグラスは地面を這いずりながら、逃げたフィッツジェラルドへの復讐を誓う。 復讐心だけを支えにすさまじい生命力を見せるグラスの決死のサバイバルが展開。極寒の川にダイブし、原住部族による攻撃にさらされ、バッファローの生肉にかぶりつき、寒さを凌ぐために死んだ馬の腹部を割いてその中に入ることも。ほとんどのシーンを自ら演じたディカプリオの作品に懸ける想いはまさにアカデミー賞級。オスカー受賞の名カメラマン、エマニュエル・ルベツキが捉えた雄大な自然は、壮絶なストーリーに反していつまでも眺めていたい臨場感抜群の美しさにあふれている。 ■なんにでも擬態する地球外生命体の恐怖…/『遊星からの物体X』 地球外生命体による恐怖と惨劇を描くジョン・カーペンター監督作『遊星からの物体X』(82)。1982年の南極大陸。アメリカ南極観測隊の基地に一匹のイヌが逃げ込み、これを保護することに。しかし、そのイヌの正体は約10年前に飛来し、長い眠りから目覚めた“生きもの”が変異したものだった。“生きもの”はほかの生物に同化し、擬態しながら増殖する寄生生物で、基地の隊員たちは互いに疑心暗鬼になりながらこの異常事態に対処しようとする。 グロテスクという言葉だけでは形容しきれない“生きもの”のビジュアルが強烈な本作。最初のイヌの頭部が花びらのように4つに分かれてほかのイヌを襲ったり、寄生された隊員の一人は腹部が口のような形状になって別の隊員の腕を食いちぎったり、さらに頭部だけが分離して昆虫のような足が生えて歩き始めたり…などなど。気持ち悪いけど、豊かなクリエイティビティを感じさせるクリーチャーたちを拝むことができる。カート・ラッセル演じる主人公マクレディの、寄生されたとわかるとかつての仲間であっても迷いなく火炎放射器を放つ、容赦のなさも潔い。 ■極限状態下で究極の選択を迫られる生存者たちの葛藤/『雪山の絆』 1970年代に起きた飛行機墜落事故とその生存者たちの実話を描いた『雪山の絆』(23)。1972年、ラグビー選手団を乗せチリに向かっていたウルグアイ空軍機571便が、アンデス山脈中心部に墜落する。乗客45名のうち29名が生き残るが、周囲は草木が1本も生えていない雪山。極限状態のなかでも互いを鼓舞しながらなんとか生き抜こうとするが、やがて食糧が尽き始め、生存者たちはある究極の選択を迫られることになる。 生存者の一人が事故から36年後に発表した著書を、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(18)のJ・A・バヨナが映画化。飛行中に飛行機が破損し、乗客を外へ吹き飛ばしながら墜落していく一連のシークエンスも恐ろしいほどにリアルだが、その後のサバイバルが想像を絶する過酷さで愕然としてしまう。生きるために自分ならどうするだろうか?そんなことを考えながら倫理観が激しく揺さぶられていく。 ■乗っていたリフトが突然ストップしてしまい…/『フローズン』 『ソウ』(04)、『オープン・ウォーター』(04)などワンシチュエーションを膨らませたスリラーの一つに数えられる『フローズン』(10)。スキー場へやって来たダン(ケヴィン・ゼガーズ)、ジョー(ショーン・アシュモア)、パーカー(エマ・ベル)の3人は、最後にもう一滑りしようと営業終了寸前のリフトに強引に乗り込むが、スタッフの手違いによって途中で電源が切られてしまう。しかも、この日は日曜日で次の金曜日までスキー場は開かない。マイナス20度の気温に加えて猛吹雪にもさらされるなか、3人は無事に生還することができるのか? もしも乗車中のリフトが途中でストップし、そのまま降りられなくなったら?このような想像をしたことがある人は少なくないだろう。そんな絶体絶命の状況を描く本作だが、金属製のバーに手が張り付いたり、野生のオオカミが現れたり、リフトがいまにも落下しそうになったりといったトラブルが次々と発生し、思わず目を背けたくなる瞬間も。この作品を観終えたあと、スキーにかかわらずルールを守って遊ぼうときっと誰もが心に誓うはず。 極寒の環境下では、体が動かなくなるだけでなく、頭も働かなくなり正常な判断ができなくなるという。命の危険と隣り合わせのこれらの作品を観れば、少しはこの暑さもマシ(?)と思えるかも。 文/平尾嘉浩