俳優・細田善彦 キャリーケース連れて世界のどこへでも…海外経験で磨いた度胸 カンボジア映画で主演級、日本人では異例の抜擢
覚えたクメール語を聞くと「タッタッタッタ…」と言うので、こちらが戸惑っていると「〝急いで〟という意味なんですよ」とニヤリ。
「日本の撮影現場でも〝急いで急いで〟とスタッフがせきたてるのと同じです。世界共通なんですね」
「テネメント」はカンボジアが国を挙げて取り組む映画製作プロジェクト。アジア進出を賭けた第一歩が今年3月、大阪市で開催された「大阪アジアン映画祭」への出品だった。
「彼は単身、カンボジアへ行き、俳優以上の仕事をしてくれました」と、映画祭の舞台あいさつで語るプロデューサーの言葉に終始照れ笑いを浮かべていたのが印象的だった。
「劇中に出てくるダイチのキャリーケースは実際に僕が海外旅行で使っているもの。衣装もほぼ自前です。役で使えるかな、と思って日本から持っていきました」
実は「大阪アジアン映画祭」では、もう1作、彼の出演作が上映されていた。日本・フィリピン・シンガポール合作映画で、女優、松林うららが初監督した「ブルーイマジン」(順次公開中)に弁護士役で出演していたのだ。
それだけ、海外から求められているということに他ならない。こんな気さくで頼りがいある役者はそうはいないからだ。
「呼ばれたら、世界のどこへでも駆け付けますよ」
そう語る世界進出は、まだ道半ばだ。
(ペン・波多野康雅/カメラ・柿平博文/レイアウト・太田丈晴)
■細田善彦(ほそだ・よしひこ)俳優。1988年3月4日生まれ、36歳。東京都出身。慶応大学卒業。2004年、CMでデビューし。NHK大河ドラマ「花燃ゆ」(15年)、「真田丸」、「青天を衝け」や、「フェルマーの料理」(TBS系、23年)など出演多数。映画「ブルーイマジン」が全国で順次公開中(現在は28日まで広島・横川シネマ)。映画「テネメント」は今年、カンボジアで公開予定(日本公開は未定)という。