センバツ2023 社高前で38年 来月閉店 文具・食品「ニューコム」 加東 /兵庫
◇おっちゃんも楽しかった 野球部との思い出たくさん 19年ぶりのセンバツ出場を決めた社高校の正門前にあり、長年選手たちと交流を続けてきた文具や食品の店「ニューコム」(加東市社)が4月で店を閉じる。38年続けてきた店主の高田光夫さん(64)と妻恵さん(61)。甲子園出場を喜ぶとともに「在校生・卒業生の皆さんに心からの感謝を伝えたい」としみじみと語る。【石川隆宣、喜田奈那】 「時代についていけなくなったかな……」。光夫さんは感慨深げだ。自身も社OB。1985年に文具や食品、制服などを扱う店をオープン。社高校の生徒にとってなくてはならない店だった。コンビニがまだ少なかった時代には、土日に練習試合に赴く選手におにぎりを販売するため、午前5時半に店を開けたことも。選手たちがちょっとした悩みも打ち明ける「たまり場」にもなっていた。 山本巧監督(50)を高校生の頃から知っており、阪神で活躍する近本光司選手(28)の思い出も記憶にある。学校の寮で暮らしていた近本選手。「寮長で、リーダーシップがあった。クリスマスの寮の催しで、お菓子袋の中身を相談したことが懐かしい」 4強入りした19年前のセンバツでは「我を忘れて毎試合、応援した」と目を細める。「卒業生がようけ来ていて『おっちゃん』『店長』とアルプスで声をかけてくれたんですわ」と話す。30代で光夫さんが長期入院したときは、社の卒業生が店を手伝ってくれたこともあった。 野球部OBで寮生だった高橋侑弘副部長(31)は「おなかが空いたときは、休みの日にもよく通っていた。みんなから愛され、当時の自分たちには欠かせないお店だった。とても寂しい」と閉店を惜しむ。 近年は選手たちの生活スタイルも変わり、直接言葉を交わすことも少なくなった。店名の「ニューコム」は、子どもたちとコミュニケーションを取りたくて付けた名前。光夫さんは「せめてあと2年続けたかったが、いろんな事情があってね」と残念がる。「最後の仕事」が立て込み、甲子園に駆けつけるのは難しいが、精いっぱいのエールを送るつもりだ。 〔播磨・姫路版〕