ワタリガニ「岬ガザミ」の完全養殖に挑戦 大分・豊後高田、ブランド存続危機で
大分県豊後高田市の漁師らが、ワタリガニ「岬ガザミ」の完全養殖に挑んでいる。海水温の上昇や生息域の藻場減少などで漁獲量が最盛期の2割程度に減少し、特産品としてのブランド存続が危ぶまれているためだ。カニの習性である共食いの克服に歩を進めている。(共同通信=森本愛) 「大きさを保ちながら育てるのが難しいが、多くの人に知ってもらえるように頑張りたい」。豊後高田市の海岸に面した約4千平方メートルの養殖場で育つ約2500匹のガザミを前に、漁師の吉永和広(よしなが・かずひろ)さん(34)は意気込む。 市によると、記録が残る2004年には約70トンあった漁獲量は現在10トン以下に減少。温暖化などによる海洋環境の変化に加え、漁業者の高齢化も影を落とす。地元では昔から身が締まった上品な甘みを塩ゆでやみそ汁などで楽しみ、観光客にも人気だ。 市や漁師を中心に2022年に始めた「ガザミ養殖プロジェクト」。市の担当者は「共食いへの対策が大きな課題だった」と振り返る。餌を多く与えたり、水を濁らせカニ同士が互いに見えないようにしたりして、出荷できる250グラム以上まで成長させた。
ただ、放流した稚ガニ約6万匹のうち取れるのは2500匹ほど。収益化には少なくとも1万匹が必要で、増数手法の確立が欠かせない。 2023年から「ぶんご岬ガザミ」の名称で県内の飲食店などに出荷を始めた。取引がある大阪府の水産卸業者は「養殖数も伸びてきて良い方向に進んでいる」と評価する。一部はふるさと納税の返礼品にも採用された。 過去には共食いを防ぐため個室状の「カニハウス」にも挑戦したが、動きを制限してしまうことで身入りが悪くなり断念した。今は養殖場の土壌や餌の改善に取り組んでおり、模索を続けている。