超能力戦士ドリアンインタビュー「『おおぞらクルージング』は自分たちで聴いても作った意味のある盤になった」
――そんな中で、そういう新しいファンにぶっ刺す新作がついに完成したわけですが、手応えはどうですか? やっさん じつは盤を出すこと自体を結構3人で話し合ったんです。時代の流れとして単曲を配信でリリースするほうがいいんじゃないか、盤で出す意味はないんじゃないか、とか。でもいろいろな人に「今年は勝負の年だね」って言われ続けていたし、こうやって取材とかをしてもらう上でも盤を出すっていう理由というか意味はあるよなということになりまして。それで、3人の総意としてリリース自体をやっと決められたんです。2年かかっちゃったんですけど、結果、自分たちで聴いても作った意味のある盤になったなと思います。テーマも曲調も幅をちゃんと持たせられたし、ライブでどうするかというのも考えたし、どういうタイトルだったら引っかかりやすいかなとかも考えられたし。これが広まるかどうかは運の部分もありますけど、下準備をしっかりできたから、仮に伸びなくても「運が悪かったな」って思えるぐらいやることをしっかりやれた。後悔の残らない盤になりました。 ――おーちくんは今作、どうですか? おーちくん 僕らの曲作りって、やっさんが原案や歌詞を書いて、けつぷりさんが打ち込みとかもやってくれて曲を作っていくんですけど、そういう能力もバンドの勢いと一緒で今がいちばん最高に達してるのかなっていう感じが歌っていてもするんです。楽曲的に、ほんまいちばんいいバンドになってるなって。 やっさん その結果、それに比例して曲がムズくなってきて、レコーディングはしんどそうやったな(笑)。 けつぷり 時間かかったな。ブースにたぶん1曲で4時間くらい入ってたもんな。 おーちくん 1行歌うのに1時間かかったりしてた。でも苦労した甲斐はあったかなっていう。 ――けつぷりさんは今回の制作、どうでしたか? けつぷり 曲作り的な部分でいうと、さっきSNSで「カフェかと思ったら美容院だった」がバズったという話がありましたけど、それって当時出した時はいわゆるリード曲じゃなかったんですよ。僕たちには別の曲を推していたんです。そういう曲が2年後に流行るって、もう到底予測できないじゃないですか。もちろん本気で作ったし、ポテンシャルはあったのかもしれないけど、こっちで操作したものじゃまったくないので。でもそっちのほうが流行るんや、カフェのバンドになるんやって。 ――カフェのバンド(笑)。あの、さっきから「カフェの歌」とか「カフェのバンド」とか言ってますけど、あれ、カフェの歌じゃないですからね。 やっさん 「カフェかと思ったら美容院だった」だから、「カフェじゃないバンド」ですね(笑)。 けつぷり まあ、それがよくも悪く読めないなって。だから今回作るときも、いったん曲調に関しては考えないじゃないけど、インスピレーションでやろうみたいな感じで作ったんです。湧いてきたやつをそのまま作ったので、自由度が上がったというか。時間はかかったんですけど、何も考えなしにできた。 やっさん だからいいテーマでも、逆にインスピレーションが湧いてこなかったから「次に回そう」ってなった曲もあります。「グループLINEで僕が返事したら返信が止まる」っていうテーマは1回ボツになりました。みんなわかるいいテーマだけどインスピレーションが湧かないから次に回そう、みたいな。どの曲が流行るかわからないし、中途半端に雑に作ってしまってライブでやりにくくなったりしたら後悔するから。 ――それで「ドラゴンの裁縫セット(笑)」みたいな曲が採用されていった。 やっさん そういうことです。 ――「ドラゴンの裁縫セット(笑)」はすごくポップな曲でいいですよね。 やっさん めちゃくちゃいいんですよ。これは、「カフェ~」のせいというかおかげで、リードっていうものを基本的には決めずに全部推そうみたいな感じだったけど、形式上は決めないといけなくて。そうなった時に「一応ドラゴンを推すか」ってなって、リード曲になりました(笑)。「そんなことテーマにすんなよ」って思ってもらえるようにタイトルもめちゃくちゃいろいろ考えましたね。 ――これ、僕の世代だとよくわからないんですよ。 やっさん 僕らより下の世代だとわかるんですけど、ドラゴンの裁縫セットがカタログの中で一際輝いていたんですよ。 おーちくん 男子小学生はそれに夢中やった。 やっさん その裁縫セットがいまだに定期的にSNSでバズったりするんですよ。「当時なんでそれ選んだの?」みたいな。そのテーマで作りたいって思ったけど、表現が難しくて。本当は2年前くらいに出そうとしたんですけど、そのときに繰り越しになった曲なんですよ。それがやっと形になった。タイトルももともと「ドラゴンの裁縫セット†」ってダガーをつけてたんですけど、意味が伝わりにくいし、ちょっと小バカにしてる感じが伝わった方がいいよなってなって、ギリギリで「(笑)」をつけようということになりました。 ――そして「ヤバイTシャツ屋さんと同じ人数」もファンにとっては待望の音源化です。 やっさん これはもともと「3人組の歌」というタイトルで1回リリースしてるんですけど、ヤバTのツアーに去年初めて呼んでいただいて、その時にMCで曲振りの時に「今日から『ヤバイTシャツ屋さんと同じ人数』に変えます!」って言ってこの曲をやったんです。その後ヤバTが出てきて、MCで「ほんまにそのタイトルで録り直してJASRAC登録してくれな許さん」みたいなMCの掛け合いをやって。そしたら(ATフィールド)青木さんが「本当にやったら?」って言うので、僕たちからご本人に連絡をして、青木さんもレコード会社とかに話を通してくれて。アレンジもけつぷりががんばってくれて、前とは結構別の曲になりましたね。ギターがめっちゃ変わりました。 ――かっこいいですよね。すごくシンプルなロックだし。 やっさん で、〈1 ! 2 !!3人組!!!〉って数える声のところに女性の声を入れてヤバT感を出そうと。そうすると聴いたときにタイトルとリンクするなってなって、今のアレンジに変わったんです。 ――あの声の主は誰なんですか? やっさん れは大阪のイベンターで清水音泉というのがあるんですけど、その会社に「声の高い事務の方いませんか?」って聞いて(笑)。ひとりいますっていうので、レコーディング当日に急遽仕事終わりに来てもらったんです。 けつぷり 普段デスクでパソコン叩いてはる人に。 やっさん 足震えてました。マイクの前立つのが初めて過ぎて(笑)。 ――これ、あれですよね。5年後とかにはまた違う、そのとき売れている3ピースバンドの名前で出し直すんですよね。 おーちくん それは不義理すぎる(笑)。 やっさん ヤバTが大きな不祥事を起こさないかぎりはこのまま行かせていただきたいなと思います。