【韓国で進む少子化の衝撃】今年の予想出生率は0.68!なぜ韓国では少子化に歯止めがかからないのか?
(立花 志音:在韓ライター) 「お義姉さん、2人目無事に産まれました~」 ソウルに住む義弟の奥さんから連絡が来た。その連絡を聞いて喜んだのは、うちの子供たちだった。 【写真】韓国の“民主化ドリーム”の勝者になったこのお方 特に4年生の次男と1年生になった末娘は、いとこも自分たちと同じ兄妹のような感覚でいる。 以前から、義弟夫婦が姪っ子を連れて遊びに来ることを知ると、「妹が来る!」と友達や先生たちに嬉しそうに話していた。 娘は去年「いとこ」という言葉をまだ覚えていなかった。 インターネット授業の先生に「妹が遊びに来るの。私の妹はいつも一緒に住んではいないけど」と話しているのを聞いたときは、焦って「いとこです」と横から声だけ割り込んだ。 何か訳アリの家族のように聞こえてしまうではないか。 平凡な微笑ましい家族に見えるが、実は筆者の家族は韓国では貴重な存在なのだ。 韓国では日本よりも急激に少子化が進み、2022年の出生率は0.78で、今年の予想出生率は0.68と衝撃的な数値が発表されている。 娘を連れて買い物などに出かけると「かわいいわね、子供は一人なの?」とよく声を掛けられる。 子供は3人だと言うと必ず言われる言葉がある。「あら、すごい愛国者ね」。この韓国で日本人が愛国者と言われている状態を、この国の国民たちはどう思うのだろうか、逆に聞いてみたくなる。 0.78という数字はOECD加盟国中最悪の数値で、去年の冬から、日本をはじめとして世界各国で報道されているのを見かける。なぜ韓国は少子化対策に失敗したのか。
■ 子育てのしやすさは日本よりも韓国のほうが上 就職が厳しい。住宅価格が高すぎる。過度な競争社会でかつ女性差別が根強い──。 もっともらしい理由がぞろぞろと並べられている。確かに一理ある。しかし筆者は韓国のさえない地方で、意外と気楽に3人の子育てをしている。しかも、自治体のありとあらゆる支援を活用して、お金はあまりかかっていない。 韓国は幼稚園から高校まで基本的に給食費が無料である。いつから無料になったかは分からないが、筆者が結婚した2005年には、既に高校生まで無料の学校給食システムが存在していた。 学校で必要が学習教材なども基本的に無料だ。 1年生で朝顔の観察日記は付けないが、4月5日の「植木の日」にはお金を払ってもいないのに、鉢植えの植物を持って帰ってくる。 去年は次男が3年生の音楽の授業で使ったカリンバという、アフリカの楽器をもらって帰って来た。 毎年ではないが、約3000円まで好きな本が学校から買ってもらえる。 もちろん自治体によって差はあるだろうが、予算が余っているんだなと思う出来事が多々ある。 日本の中高生が入学するときに負担増となるのは学校制服だろう。しかし韓国の制服は日本のウール100%のブレザーや学ランとは違い、手ごろなものだ。 しかも、半分以上は自治体からの補助が出て、親の持ち出しは日本円に換算しても1万円以下である。 その制服も公立の中学生が、真面目に毎日着るのは1年生の間だけだ。2、3年生になると運動部でもないのに、上下黒のジャージにクロックスのサンダルで通学する子も多い。 そして、日本の公立学校のようにPTAに時間を割かれることもない。 日本より韓国のほうが子育てがしやすいかもしれないと、筆者は経験上思う。待機児童問題どころか、我が家から徒歩2分のところにあった保育園は園児が集まらず、閉園してしまった。 ではなぜ、少子化に歯止めがかからないのか。