その名は「あましだま」 熊本・天草支援学校高等部の生徒 使い古したボール手縫い補修 地域の高校野球部へ
熊本県の天草支援学校高等部の生徒が、天草地域の高校野球部で使い込まれたボールを手縫いで修繕し、再び練習で活用してもらっている。その名も「天支球[あましだま]」。生徒らは「同じ高校生の応援をできてうれしい」と細かな作業もいとわず針を動かしている。 修繕を始めたのは2年前。熊日に載った「インクルージョンボール」の記事がきっかけだった。北海道の野球団体が、部活動などで使い古された硬式球を障害者の就労支援施設で修繕してもらい、再利用している、という内容だった。 最初に隣接する天草拓心高に声をかけ、各校に広がった。今では天草、天草工、上天草、牛深と天草地域全高のボールを修繕している。 生徒らは、ボールの古い糸を全てほどき、2枚の革を一つ一つ丁寧に縫っていく。授業中や昼休みなどを使い、1個に計2時間ほどかかる地道な作業。本年度は約100個を修繕した。3年の今池晴空[はく]さんは「縫い目の左右を間違えないようにし、針を通した後はしっかり締める。とても集中力がいる」と話す。
天草地域では、今夏の全国高校野球選手権熊本大会で、天草工が45年ぶりに4強進出を果たした。3年で生徒会長の山下隼輝さんは「テレビの前でみんなで応援していた。彼らの活躍は自分たちのことのようにうれしい」と喜ぶ。 11月にあった支援学校と天草拓心高の交流会では、野球部員から直接お礼を言われた生徒もいた。熊本県内の各校で野球を指導してきた、天草拓心高の鬼塚博光校長は「身近な生徒から心を込めて修繕してもらい、選手たちは頑張ろうと思えるし、道具を大切に使うようになる。とてもありがたい」と感謝する。 山下さんは「自分たちも彼らの練習に貢献できているようでやりがいがある。今後も続けたい」と話している。(福井一基)