「アユ! アユ!」京都の料亭で鮎の塩焼きに感動するほどの日本好き。缶コーヒーのボスのあの俳優との戸田奈津子が忘れられない思い出とは
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.33 トミー・リー・ジョーンズ
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
『メン・イン・ブラック』がキャリアの転機に
日本では缶コーヒーのCMでおなじみですが、トミー・リー・ジョーンズのキャリアの転機になったのは、ウィル・スミスと共演した『メン・イン・ブラック』(1997)。エイリアンを監視する最高機密機関MIBのエージェント役を、寡黙に無表情で演じる姿がコミカルでした。映画もとてもおもしろかったし、存在感がありましたね。 ハーヴァード大学出身で、アル・ゴア元副大統領とルームメイトだったのは有名な話。『メン・イン・ブラック2』(2002)の来日時に奥さんともお会いしましたが、芸能界とは無縁の、とても知的で素敵な方でした。「こういう女性を妻にする男性はあなどれない!」と、奥さんを見てさらに彼の評価を上げました。 日本好きとしても知られていて、京都の俵屋旅館に滞在中、火事に遭ったのに「すごくエキサイティングな体験だった」と言っていたことを覚えています。同じく京都では、鮎の塩焼きを食べて「こんな美味しい魚は食べたことがない」と大感動。 その後、映画のプロモーションのために東京に来てからも、「アユ! アユ!」と連呼していました。ちなみにはらわたが苦い鮎の味がわかる外国人はそう多くありません。いろいろな意味でユニークな、忘れ難いスターの1人です。
『メン・イン・ブラック』(1997)Men in Black 上映時間:1時間38分/アメリカ
ニューヨーク市警の刑事エドワーズ(ウィル・スミス)は、黒いスーツに身を包んだ男“K”(トミー・リー・ジョーンズ)にスカウトされ、最高機密機関MIBの一員となる。 過去を抹殺され、名前もただの“J”となった彼は、地球上に約1500体ものエイリアンが人間に姿を変えて暮らしていることを知る。エイリアンが犯罪や侵略行為に及ぶことのないよう監視し、その存在を世間から隠すことがMIBの任務だった。