錦織圭 全米出場の最終判断をギリギリまで引き延ばす理由
今回行なわれた記者会見の会場は、ニューヨークで唯一の日系4つ星ホテル『ザ・キタノ ニューヨーク』だったが、錦織は昨年もこのホテルに宿泊し、同じように日本のプレス向けにプレトーナメント会見を行なった。トッププレーヤーのこうした会見は通常、会場のインタビュールームで行なうもので、それを滞在ホテルで自国メディアのためだけに行なうケースは珍しい。 錦織に対する日本からの極端に高い需要を物語っている。と同時に、ホテルにとってもコマーシャル効果は大きく、つまりこれ自体がビジネスとして成り立っている。このホテルは過去にロジャー・フェデラーやマリア・シャラポワも迎えており、それぞれ宿泊した年に優勝したという自慢の〈実績〉がある。昨年はそのことが会見の冒頭で紹介され、錦織の笑顔がやや引きつっていたのが印象的だった。結果、1回戦負けだったことは先に触れたが、2年目の今年、日系一流ホテルの目玉のゲストとしてプレッシャーがまったくないわけはないだろう。 自分自身の気持ち、周りの思い、大人の事情……さまざまなことを考慮しての〈決断保留〉だと思う。ただ、全仏オープンの1回戦敗退がそうだったように、この状況で5セットマッチを勝ち進めるほど甘くはない。もちろん錦織はそれを誰よりもわかっており、それでもなお待つと決めたのだ。 では私たちは、錦織が仮に出場を決めたら何を〈期待〉しよう。幸い、昨年は1回戦負けだったために1回勝てばそれだけでポイントが稼げる。ならば、どんなかたちでもいいから1勝? あとは中一日の進行で日に日に向上? こうして楽観的に膨らんでしまうのだが、まずは、錦織がそこまで立ちたかった舞台がせめて失望だけで終わらぬように願いたい。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)