「熱中症で殺したり、溺死させたり…」悪質ブリーダーのヤバすぎる実態「チワプー」などの異種配合は「命への冒涜」【杉本彩さんインタビュー前編】
ただ一方で、ブリーダーの中にはアニマルウェルフェア(動物福祉)の精神を持っている人もいます。良いブリーダーは簡単には産ませません。この人だったら産ませた子を譲っても良いという人が現れない限り、繁殖させない人も居ます。こういう人は、子犬をオークションには流さないので、ペットショップに流通しません」 ──アニマルウェルフェアを重視すると商売としてはなかなか成り立たないですね。利益至上主義の業者とは対照的です。 「このような優良ブリーダーと違い、たくさんの頭数を抱えている繁殖業者の飼養施設では、虐待(ネグレクト)が常態化しています。病気や怪我をしていても医療にかけない医療ネグレクトであったり、抱える頭数に見合う人員がいないことから適正な給餌給水がされていないなど。『A』の裁判で、繁殖施設にいる犬の写真が法廷に映し出されたのですが、本来丸くふっくらしているフレンチブルドッグがガリガリに痩せ、大きな目が落ちくぼんだ顔が非常に印象的でした。帝王切開も雑な縫い方で傷がひどかった。そして犬は基本ケージに入れっぱなしです。繁殖と出産の時だけ外に出すのでしょうが、散歩なんてまずしません」
──今年6月に、動物愛護法の改正が完全施行となりました。飼育数の制限や飼育法など動物の飼育環境に配慮されたものとなりました。 「形としては前進しています。ですが実際に頭数制限を守っているか行政が事業者の所にいって把握することは極めて困難です。埼玉の事件でも、当時テレビのニュースで見ましたが、一つの小さなケージに2頭犬が入って吠えていたじゃないですか? もうあの時点でアウトなんですよ。 頭数制限があったとしても、そしてケージ内に一定のスペースを設けてくださいと決まっていても、埼玉のケースで行政は12回立ち入り調査を実施したそうですが、口頭で指導していただけで改善に繋げることなく最終的には警察が入り逮捕に至りました。業界の問題を解決する上で、最初に介入できるのは行政ですからここで確実に改善させないと動物の苦痛が長引くし、命を落とすことに直結します」 ──法改正が完全施行となり形式的には以前よりも整ったわけなので、実際に現場を所管する地方自治体の意識がもっと変わる必要があるということですね。 「はい。無麻酔で帝王切開をしていた長野県の業者『A』もそうでした。行政は14年間こういった状態が続いているのを分かっていたのに何一つ改善させられなかったんです。残念ながら、形式的な指導を繰り返しているというのが動物愛護に関わる行政の現実です」
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