【コラム】母と息子のイギリス・サマーキャンプ体験記 “目の色が起こした嵐”とミーム汚染【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
約2か月間続くイギリスの長い夏休み。子どもたちはどのように過ごすのでしょうか。世界中から多国籍な子どもたちが集まるサマーキャンプで出会った個性的な子どもたちと、独特な学びをひもときます。 (NNNロンドン支局長 鈴木あづさ)
■無料のサマースクールへ 「申込用紙」を見て驚いた
暑い夏だった。ヨーロッパは地中海を中心に記録的な猛暑に見舞われ、イタリアのローマやイギリスでは6月の気温が観測史上最高を記録、1940年の最高記録を0.9度上回った。そして7月4日、世界の平均気温が17度を超え、17・04度に。NASA(アメリカ航空宇宙局)によれば、1880年以降最も高い気温を観測したとのこと。 とはいえ、シングルマザーにとって、目前の敵は暑さより、何より息子の学校の夏休みである。約2か月間もの長い休み。カレンダーで休みを合算してみると、一年のうち約半分は家にいることになる。普段は寮生活をしてくれているので仕事しやすいのだが、これからは毎日、家にいる……だけではなく、3度の食事まで作らなければならない――目の前が暗くなったところで、ご近所のアルジェリア人のおじさんが「息子が行っているサマースクールに来るかい? ランチも出るし、無料だよ」と教えてくれた。 「無料!?」と思わず叫んだ私に、おじさんも苦笑い。「そうそう、教会がボランティアでやっているから、ぜーんぶ無料。何回か公園とかに遠足に行くけど、そのときだけ一回5ポンド払えばいいんだ。今度のバザーでサインナップ(申し込み)があるけど、行くかい?」ええ、ええ、行きますとも! 張り子の虎のように首を振り、おじさんの奥さまと連れだってバザーに出掛けた。
おじさんの奥さまはヨルダン人の大柄な女性で、大ぶりのサングラスにしっかり口紅をひいた姿でぐいぐい奥に進んでいく。ふくらませたバルーンの家でぴょんぴょん跳ねる子ども用の遊具や、古式ゆかしいわたあめ製造機に混じって、古着や古道具,古本を売る店、手作りのケーキやマフィンを売る店などが軒を連ね、その一角に「サマースクールのサインナップはこちら!」と手書きの画用紙が貼られたテントがあった。 奥さまが慣れた様子で「サインナップに来ました」と声をかけると、威風堂々、肝っ玉母ちゃん風のおばさまがおもむろに顔を上げる。奥さまと目が合うと笑顔になった。旧知の仲らしく、両頬にちゅっちゅっとヨーロッパ定番のあいさつを交わしている(これはいつまでたっても日本人には少々恥ずかしい)。 やがて隣に突っ立ったままの私に気づいて「あなたも?」と声をかける。「あ、はい。半年ほど前にこちらにきた11歳の息子をエントリーしたいんですが、日頃こちらの教会に通っているわけでは……」とおずおず申告してみるものの、担当者アナさんは「全然、問題なーし!」と破顔一笑。