「家族にかっこいい姿を」箱根駅伝初Vを狙う國學院大メンバー ケツメイシ大蔵さん息子が見る“初夢”
経験を積むために出走した10月の東京レガシーハーフマラソンでは1時間03分31秒でしっかりまとめた。自身初となる21.0975kmのレースとしては及第点の出来と言っていい。そして、迎えた11月の上尾ハーフマラソン。前田監督からは2週間前に明確な基準を提示されていた。 『16人のエントリーメンバー入りするには最低でも1時間2分台、10人のレギュラー組は1時間2分半を切ること』 吉田は箱根メンバーの選考を兼ねたトライアルレースで申し分のない結果を残す。先輩に食らいついて練習してきた成果を発揮し、國學院1年生のトップタイムとなる1時間02分29秒をマーク。確かな手応えをつかみ、エントリーメンバー入りを果たす。 「目標にしていた1時間2分半を切ることができました。僕の場合、長ければ、長いほど強みを出せます。一定のペースで押していけるので」 はきはきと話す口調には自信がにじむ。本番が迫るなか、箱根路を走るイメージを膨らませていた。埼玉栄高校時代の同期たちと観戦した記憶も、鮮明に脳裏に刻まれている。あふれる観客、熱を帯びた大声援。沿道で抱いた思いは、いまも忘れない。 「僕もここで走ってみたい、と思いました。どの区間であっても、家族は応援にに来てくれると思いますが、かっこいい姿を見せたいなって」 エントリーされた復路の重要区間である9区は大きな責任をともなうが、2022年の全国高校駅伝でも重圧のかかるアンカーを経験済み。度胸はスポットライトが当たるステージで歌う父親譲り。大観衆の前でも萎縮することはない。「僕は歌えないけど」と苦笑しながらも、夢の舞台を心待ちにしている。100回大会に思いをはせ、役割を果たすことを誓う。 「長い距離で勝負する練習はしてきました。『てっぺん』を取るには最低でも区間5位以内に入らないと、話にならないと思います。1年生らしからぬ走りで、チームの目標達成に貢献したい。区間賞を目指します」 歌うたいの父親が見守る箱根路で一生を忘れることのない『夏の思い出』ならぬ『冬の思い出』にするつもりだ。 取材・文:杉園昌之 1977年生まれ。サッカー専門誌の編集兼記者、通信社の運動記者を経て、フリーランスになる。現在はサッカー、ボクシング、陸上競技を中心に多くの競技を取材している。
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