【府中牝馬S回顧】毎日王冠をしのぐハイレベルな一戦 ブレイディヴェーグは牝馬同士では一枚上
牝馬同士なら抜けているブレイディヴェーグ
勝ったブレイディヴェーグは昨年のエリザベス女王杯以来11カ月の休み明け。頓挫が続き、思うようなレースプランを描けない歯がゆさをいっぺんに晴らすかのような走りだった。 1年近く休んでおり、距離変化もないに等しかった。まだ6戦目。なかなか順調に使えず、叩いてエリザベス女王杯連覇はどうか。その一点に尽きる。出走態勢さえ整えば、牝馬同士では一枚抜けている。今回はそれを証明したレースだった。 2着シンティレーションは夏の新潟で4勝目をあげたばかり。そんな状況を踏まえ、今回は腹を括って後ろからの競馬を選択。目前にブレイディヴェーグがおり、レースはしやすかった。とはいえゴールまで加速を続ける強烈なラップを後方から最後まで伸びており、早くも重賞通用のメドが立った。本来はもう少し流れに乗れるタイプでコース替わりも苦にしない。 もともとは2歳時はアルテミスS5番人気の好素材。ふたつ上の半姉ファシネートゼットは父ヘニーヒューズでダートを主戦場としていたが、オープン入りを決める4勝目をあげたのは5歳秋。シンティレーションもまだ頑張れる。クラブ馬で翌年春がリミットになるが、牝馬限定重賞は春のマイルへのシフトチェンジの過程に2000、1800mの重賞が用意されている。 3着マスクトディーヴァは位置取りこそ悪くなかったが、直線で馬場の真ん中から内へ切れ込む形になり、その分、末脚全開とはいかなかった。 春のヴィクトリアマイルも直線でさばきに手間取る場面があり、ここのところ力を出し切れていない。少し器用さを欠くタイプでもう少し強気に前に行き、しっかり進路を確保しつつ直線を迎えるレースがいいかもしれない。エリザベス女王杯出走なら距離が延び、前につけやすい。 4着フィアスプライドは昨年と同じ着順に終わった。中山牝馬Sを落とし、ヴィクトリアマイル2着など休み明けを使ってよくなるタイプも、距離適性を考えると1800mは少し長いかもしれない。最後の伸びをみるとベストはマイル。秋は少し目標に困り、悩ましい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳