ヘンダーランドに不健康ランド、20世紀博、ディノズアイランドなどなど!「映画クレヨンしんちゃん」に登場した個性豊かなテーマパークたち
1993年に劇場版第1作『映画クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』が公開されてから約30年。シリーズ31作目となる『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』が公開となった。しんのすけたち野原一家や、かすかべ防衛隊の面々はこれまで様々な冒険を繰り広げてきたが、最新作では現代に復活した恐竜たちのテーマパークが物語の舞台となる。そこで、「映画クレヨンしんちゃん」シリーズに登場した印象的なテーマパークや不思議の世界を振り返ってみたい。 【写真を見る】巨大な恐竜たちが東京の街を蹂躙!? ■「近頃なんかヘンだー!」のCMソングがクセになる『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』 テーマパーク自体が物語の舞台となった作品といえば、シリーズ第4作の『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』(96)。北関東一のテーマパーク「群馬ヘンダーランド」がオープンし、ふたば幼稚園の遠足でしんのすけ(声:矢島晶子)たちが来園。一人はぐれたしんのすけはサーカス小屋に迷い込み、そこでねじ巻き人形のトッペマ・マペット(声:渕崎ゆり子)と出会ったことから魔法のトランプ「スゲーナスゴイデスのトランプ」をめぐる戦いに巻き込まれる。 ヘンダーランドは「おとぎの森」と中世ヨーロッパの街並みが広がる「ヘンダーランド」、アトラクションエリア「プレイランド」の3つで構成され、その奥地にはヘンダー城がそびえ立っている。パーク上空には巨大なマスコットキャラクターのバルーンが浮かび、建物のデザインはどこか歪。「近頃なんかヘンだー!」のフレーズで始まるクセの強いCMソングも印象的だ。その正体は異世界からやって来たオカマ魔女のマカオ(声:大塚芳忠)とジョマ(声:田中秀幸)の根城であり、しんのすけたちの世界を乗っ取ろうと企んでいた。しんのすけら野原一家はマカオ&ジョマたちと激闘を繰り広げ、特にギャグとシリアスが混在したババ抜き対決はシリーズ屈指の名シーンとなっている。 ■拷問用レジャー施設「不健康ランド」が登場した『映画クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』 日本政府直轄の秘密組織「温泉Gメン」と地球温泉化計画をねらう「YUZAME」との戦いを描く『映画クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(99)にもテーマパークが登場した。YUZAMEの首領、ドクター・アカマミレ(声:家弓家正)は、捕らえたしんのすけ、ひろし(声:藤原啓治)、みさえ(声:ならはしみき)、ひまわり(声:こおろぎさとみ)、シロ(声:真柴摩利)ら野原一家を尋問するため、自身が日曜大工で作った拷問用のレジャー施設「不健康ランド」に彼らを送り込む。 その内容は、腹筋で進むトロッコや人間用の回転車、後ろからくすぐり用のはたきが追いかけてくるチューブ、画面に表示される「〇□△▽」のアイコンを正しく押さないと進まない筏といったかなり大掛かりな仕掛けで構成されている。誰か一人でも山頂のゴールにたどり着けば解放すると約束するアカマミレだが、実際はどのアトラクションも山の周囲をぐるぐると回るだけの非情なアトラクションだった。 ■「20世紀博」の“懐かしい臭い”に大人たちが夢中になる『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)に登場するのは「20世紀博」という万博風のテーマパーク。施設内では特撮ヒーローや魔法少女になりきってスタジオ撮影ができるほか、レストランで学校給食が振る舞われ、懐かしい玩具や駄菓子を販売するショップがあるなど昭和の思い出を追体験できることから、ひろしやみさえたち大人はすっかり夢中になってしまう。パーク内だけでなく、街中には旧車が走り、レコードや白黒テレビが販売され…といった具合で、外の世界にも影響を及ぼしていた。そしてある晩、「20世紀博からの大事なお知らせ」が放送されたことを機に、大人たちは子どもを置いて去ってしまう。 20世紀博の正体は、21世紀の日本に絶望したイエスタディ・ワンスモアのリーダー、ケン(声:津嘉山正種)と彼の恋人、チャコ(声:小林愛)によって建てられた施設。誰もが希望を持って生きていた20世紀に、日本を逆戻りさせようとし、施設内部にはケンに賛同する人々が暮らす古きよき時代の昭和の街並みが広がっている。20世紀博から発せられる“懐かしい臭い”で大人が洗脳されるなか、しんのすけたちが未来を取り戻そうと奮闘する。子ども時代を遡っていたひろしが自身の靴の悪臭を嗅がされたことで、青春時代や家族との思い出が甦り、正気を取り戻すシーンは涙なしでは観られない。 ■遊園地でかすかべ防衛隊とスウィートボーイズが激突した『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』 全編ギャグに振り切った『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』(03)は、謎の組織「有限会社スウィートボーイズ」によって指名手配された野原一家が、晩ごはんの超豪華焼肉にありつくまでを描くロードムービー。4人と一匹がバラバラになって逃走するなか、しんのすけとかすかべ防衛隊がスウィートボーイズの構成員と激突する場所として遊園地が登場している。 執拗な追手を巻くため、ボーちゃん(声:佐藤智恵)のアイデアで遊園地へ逃げ込んだしんのすけたち。そこへ数機のヘリコプターを伴って、組織の幹部、堂ヶ島少佐(声:徳弘夏生)が登場し、観覧車から走行するジェットコースターへと白熱の逃走劇が展開された。その際、幹部の一人で強硬派の天城(声:皆川純子)が一機のヘリをハイジャックし、強引にしんのすけたちに接近した結果、ヘリが墜落。隊員が「ブラックホーク・ダウン!」と連呼するなど、リドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』(01)をオマージュしたような演出も見られた。 ■どんな願いも叶う「ユメミーワールド」に迷い込む『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』 テーマパークではないがシリーズ第24作『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』(16)では夢の世界が描かれた。野原一家をはじめ春日部市民が巨大な魚に飲み込まれる夢を見たのをきっかけに、夢の中の不思議な世界「ユメミーワールド」に迷い込んでしまう。時を同じくして、ふたば幼稚園に貫庭玉サキ(声:川田妙子)という少女が転入してくる。 ユメミーワールドではマサオくん(声:一龍斎貞友)が人気漫画家になったり、ネネちゃん(声:林玉緒)が人気アイドルになってファンに囲まれたり、風間くん(声:真柴摩利)が政治家になったりと、それぞれの願いを叶えることができた。しかし、ひろしやみさえの夢が謎の生き物によって奪われるなど、しだいに大人たちが悪夢にうなされるようになり、現実世界でも元気を失っていく。実はユメミーワールドは、サキの父、貫庭玉夢彦(声:安田顕)が悪夢を見続ける娘を救うために作り上げたものであり、人々から楽しい夢を奪い取ることでサキの悪夢を中和していたのだ。 ユメミーワールドはファンシーでメルヘンチックだが、巨大な夢魚、人々の夢を吸収する動物たちからは異質さも感じさせる。さらに、悪夢の世界には荒廃した街並みが広がっていて、特にサキを苦しめる怪物のビジュアルはトラウマ級。サキが悪夢を見るようになったのは夢の研究者だった母、サユリ(声:吉瀬美智子)を実験中の事故で失ったことがきっかけであり、一連の事件の発端がサキと夢彦であることを知ったうえで、彼女を救おうと立ち上がるしんのすけたちかすかべ防衛隊の友情は胸アツだ。 ■様々な恐竜が地上を闊歩する『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』 最新作『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』では、恐竜を復活させた一大テーマパーク「ディノズアイランド」が東京にオープンし、子どもも大人も恐竜に夢中になり、世間は恐竜フィーバーで沸いている。そんな時、シロが河川敷で小さな恐竜と出会い、ナナ(声:水樹奈々)と名付けられたその恐竜は野原家で暮らし始める。しかし、ナナをねらう怪しい連中がしんのすけ(声:小林由美子)たちの前に現れたことから、恐竜争奪戦が勃発。さらに、トラブルでパークから恐竜たちが脱走し、東京や春日部を蹂躙するなど人々はパニックに。ローンがまだ32年残っている野原家の家も踏み潰されてしまう…。 「ジュラシック・ワールド」シリーズのようなディノズアイランドには、ティラノサウルスにトリケラトプス、スピノサウルス、ブラキオサウルス、プテラノドンとバラエティ豊かな恐竜たちが闊歩。次々と登場する恐竜たちを眺めるだけでもワクワクが止まらない。一方で、シロとナナの生命の垣根を超えた友情を軸に、人類によって生みだされた恐竜たちをめぐって命の大切さも伝えてくれる。恐竜騒動で人々がパニックに陥るなか、しんのすけたちたちはナナを守ることができるのか?夏休みにぴったりなハートフルなストーリーをぜひ劇場で! 文/平尾嘉浩