「えっ紅茶も?」もはや意味不明の“クラフトブーム”、それでも消費者が引かれるワケ
こだわった味わいの「クラフト」飲料が近年は人気だ。クラフトビールやクラフトコーラが代表格だが、なぜこうしたクラフト商品が求められているのか。ブームの理由を消費経済アナリストの渡辺広明氏に聞いた。(清談社 沼澤典史) ● ブームの背景にある 消費者嗜好の多様化 昨今、よく目にするようになった「クラフト」という言葉。クラフトビールに始まり、クラフトコーラ、クラフトジンなどに触れたことのある人もいるだろう。クックパッドが毎年発表している「食トレンド予想」では、2024年のトレンドとして「クラフト紅茶」が挙げられるなど、まだまだクラフトブームは続きそうである。 ブームになりつつあるクラフト商品の発端について、渡辺氏はこう語る。 「クラフト商品の先駆けは、ビールです。1994年に酒税法が改正され、ビール製造免許に必要な最低製造量が年間2000キロリッターから、60リッターに減少しました。この規制緩和によって、小規模な醸造所が各地で作られ、観光地を中心に土地ごとに個性を出した『地ビール』が誕生していきました。その後、地ビールブームは下火になりましたが、継続して醸造しているところもあり、彼らが作る大手メーカーの商品とは一味違う個性的なビールがクラフトビールと呼ばれるようになったのです」 そんなクラフト飲料が、現代の消費者に人気な理由を渡辺氏は次のように指摘する。
「現代では、あらゆる分野で消費者の嗜好が多様化しており、大手メーカーのマスな定番商品がひとつあればいいという時代ではなくなりました。こだわりが強く、商品のバックグラウンドやコンセプトを意識する消費者も増えています。彼らにとって、作り手の顔が見えたり、こだわりが詰まっていたりするクラフト飲料は、多少価格が高くてもお金を払う価値のある商品になっています。『いいものを安く』という従来の消費スタイルから、『価値あるものにはきちんとお金を払う』という考えに移っている層がいるとも捉えられます」 ● 消費者に刺さる「クラフト」 次なるブームは紅茶か 一方、クラフト飲料は製造するメーカーにとっても、推し進めるメリットがあるという。 「手間暇かけたり、素材にこだわっているクラフト商品は、大量生産されたマスな商品よりも価格が高めです。そのため、マーケット的にも単価を上げられ、話題になったりリピーターが増えたりすれば、製造している中小企業も儲かります」 また、市場開拓という意味でもクラフトというジャンルは有効なのだと渡辺氏は語る。 「ビールやコーラなど大手メーカーやブランドがすでに存在する市場に参入する際には、新しいジャンルを作って市場を拡大させる必要があります。そういった意味ではクラフトというくくりは新しいジャンルに見えるのです。そして、マスな商品に飽きていたり、こだわりが強かったりする消費者にクラフト商品は刺さるのです」 これが当てはまる飲料のひとつが、まさに紅茶だという。 「紅茶市場は、コーヒーやビールなど他の飲料に比べて国内では規模が小さいです。よくコンビニの売り場は世間の需要の縮図と言われますが、実際、コンビニの飲料売り場を見るとコーヒーやビールに比べて紅茶は、種類も本数も圧倒的に少ないですよね。実際『午後の紅茶』しか置いていない店舗もあります。そのような市場では、なにかしらの新しいジャンルやブームなど、大きな話題がなければ、拡大は難しいです。そのため、クラフトという新しいジャンルを作ることは、紅茶市場を広げるためには理にかなっています」 クラフトというジャンルは市場を変えていく力を秘めているのだ。事実、紅茶に注目する動きが現れている。